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グローバル市場を勝ち取った、デンマーク企業のイノベーション戦略

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Christer Windeløv-Lidzélius(ビジネスデザインスクールKaospilot校長@デンマーク)

日本のみなさんこんにちは。クリスターです。

本日は、急激な変化を続ける世界市場の中でも優位な地位を保持し続けるデンマーク企業の成功の要因を解説します。

変化の時

音楽家として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランはこんな歌詞の歌を書きました。

「生まれ変わるのに忙しくないものは、消滅することに忙しい。」

これは組織に関しても同じことが言えます。あなたの企業は、自分を革新するのか、倒産するのか、どちらに忙しいですか?

ほとんどの企業は、もっとイノベーティブで将来を見据えた事業戦略経営をしていく必要があると、研究で裏付けられています。この考えはここ10年で研究者や経営者の間で合言葉のように共有されている考えです。イノベーションマネジメントやテクノロジーマネジメントに関する研究が、注目を集め始め、これまで私たちが持っていた「経営」の捉え方を大きく変えることになります。

デンマークの戦い方

デンマークの企業は、他国と比べてもユニークな戦い方をします。そもそもデンマークは昔から、国際経済に積極的に参加する姿勢をとる小さな国として、資源の少なさをカバーしてきました。そのおかげで、デンマークは第一・第二産業の製品を輸入することで、農業社会というよりも貿易国家という形で末長く繁栄して来ました。産業社会と呼ばれる現代において、デンマークは収益性の高いニッチ産業に集中し、世界トップクラスの製品をデンマークの経済規模と比べると比較的少ない数で輸出しました。そのほかの商品やサービスは全て輸入しながら。この作戦は企業と研究者の協力によって成立していました。

例えば、輸出においてデンマークが秀でていた牛肉に関しては、牛の遺伝子研究に特化したデンマークの大学やその研究者、そして農家が協力して輸出額を伸ばしました。糖尿病患者のためのインシュリンに特化した医療機関Novo Nordiskやストーマ用品会社のNovozymesやColoplast、「おそらく世界一のビール」をスローガンとしていたビール会社Carlsbergはどれもデンマーク政府や大学と協力したことで売り上げを大きく伸ばした企業の例です。

デンマークの強み

デンマークのように、いかに業界・分野を超えた協力が大切かを象徴する対照的な事例を2つ紹介します。一つは、スマートフォンの先祖とも言えるGSM(Global System for Mobile Communication)型携帯、もう一つは風力発電の例です。

国際的なコミュニケーション手段として携帯電話が普及したのは、デンマークで開発されたソフトウェアのおかげと言っても過言ではありません。GSM型のソフトウェアの開発によって、アールボーグ大学と多くの企業が提携し、「携帯電話」という新たな市場が誕生しました。しかし、市場が成熟してくるうちに、市場の利益の多くを得たのはデンマークの企業ではなく、大量生産に強みを持っていたフィンランドやドイツ、または中国などのアジア諸国の企業でした。そして、いつの間にかデンマークが開発した携帯電話の市場は淘汰され、「スマートフォン」という新たな市場が生まれたのです。

この事例に対照的なのが風力発電のケースです。現在、そのサスティナビリティに多くの注目が集まっている風力発電ですが、その開発にはかなりの研究開発を要しました。特に1990年代には集中的に研究開発が行われ、そのトップにいたのはアメリカと小さな国・デンマークでした。1人年を1人が1年に稼働できる作業量とすると、アメリカは50万人年もの時間を研究に投資をしたのに対し、デンマークは10万人年にとどまっていましたにもかかわらず、90年代後半の風力発電機メーカーTOP10の内、7つはデンマークの企業が占めていたのです。

研究規模が限られていた中でも、デンマークは少なくとも大量生産性、それに伴う収益性という意味では勝利を納めました。現時点では、中国をはじめとする他国はデンマークの技術に追いつくことに精一杯で、アメリカに至っては風力発電に関しては荒廃してしまいました。では、研究開発にかけられる資本が限られていながら、どうやってデンマークは勝利を納めるに至ったのでしょうか。残念ながらその答えは、優秀な研究者が居たからではありません。コペンハーゲン・ビジネススクールのPeter Karnoe教授は、デンマークの成功の本当の理由は大学と企業のより良い協力が、発電機のデザインの細かな改善を可能にし、大量の資金と人力で勝負するアメリカに打ち勝ったと言います。

イノベーションの必要性

現在、ビジネスにおける競争は、新しいものを生み出し、一度得た地位を保持し続けることだけではなくなっています。1905年の商業組織の平均寿命は、約70年でした。1世紀後、その数字は20年にまで落ちてしまいました。インターネットの普及に全ての責任を押し付けることはできませんが、これほどまでに平均寿命が短くなっていることは懸念すべきことです。もしあなたの企業のビジネスモデルが持続可能でないモデルだったら?成功するビジネスモデルとは、一時的なものでしかなく、社会に新たな価値を生み出しても、時が経てばその価値は薄れ、企業も衰退してしまいます。

あなたの会社は衰退に、どのくらい近づいていますか?

今回は、独特なアプローチで市場を勝ち取るデンマークの企業戦略を紹介しました。

次回は、COVID-19や地球温暖化など、現代社会におけるさまざまな変化に対応する術をご紹介します。

Thank you.

Christer

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