皆さんこんにちは。当社では、ウェルビーイングについて探求する連載を行っており、本記事は2本目となります。
前回の記事では、ウェルビーイングの定義や指標について解説しました。
また、ウェルビーイングと一言でいっても、
- Career Wellbeing(仕事の幸福)
- Social Wellbeing(人間関係の幸福)
- Financial Wellbeing(経済的な幸福)
- Physical Well-being(身体的な幸福)
- Community Well-being(地域社会の幸福)
という5つの要素に分かれているという、アメリカの調査会社・ギャラップ社の考え方も紹介しました。
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1日のうちの長い時間を仕事に費やしている人にとっては、仕事内容や職場環境がウェルビーイングに大きく関わってきます。そのため、従業員の働く環境を整えたり、彼らの希望を吸い上げる努力をすることが、企業側にも強く求められています。
今回は、厚生労働省が企業に求める従業員のウェルビーイング対策について、お話しします。
ウェルビーイングに対する取り組みの重要度、コロナ禍で飛躍的に向上
厚生労働省は、「就業面におけるウェルビーイング」について、平成30年度雇用政策研究会報告書(*1)で以下のように定義しています。
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「就業面からのウェル・ビーイングの向上とは、働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になること」
---------そして同省は2022年度 雇用政策研究会「議論の整理」(*2)の中で、働き方を変えることを余儀なくされた近年のコロナ禍で、就業環境には以下のような変化があったと指摘しています。
- 非正規雇用者の解雇など、弱者への皺寄せ
- 休業による収入の減少、メンタルヘルスの悪化や生活の満足度の低下
- テレワークになじまない職種もあり、職種間格差が発生
- ワークエンゲージメント(仕事に関連するポジティブで充実した心理状態)の低下
- 家事、子育て、介護といった生活時間と仕事の両立の難しさも浮き彫りに
同省が「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を示すワーク・エンゲージメントや睡眠などの健康状態が、企業業績の向上に関係性がある」ということに触れている(*2)ことからも、「仕事以外の環境を含めた労働者のウェルビーイングの向上」を図っていくことが、いま企業に求められているのです。
労働者のウェルビーイングの向上で企業業績もアップ
就業環境が大きく変化した昨今、労働者のウェルビーイングを向上させ、企業業績を高めていくために、企業は具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか?
この点について、同省は以下のようにまとめています。
- キャリアに関する希望だけでなく、就業に関係する家庭事情等を把握
- 多様性と柔軟な働き方への理解
- デジタル化への対応を始めとする新しい高度な技能を有する人材の育成
- AIの活用
- OFF-JTや他企業・他団体での経験など、企業外の様々な人的資本蓄積の機会を活用
- 企業内部の人材育成を強化し、変化への対応力を高める
- キャリア面談、スキルアップ研修などを整備し、キャリアに関する希望だけでなく、就業に関係する家庭事情等を把握
変化のスピードの高まりや予見可能性の低下に対応するために、社外の人材を積極的に活用することにも触れています。
また政府は、こうした労働者・企業の取り組みをサポートするため、労働市場の基盤整備を図り、再就職支援やキャリアコンサルティングを通じて多様なキャリア形成の「場」を提供するとともに、多様性に即したセーフティネットを構築するとしています。
働き方が多様化する中で、個々の労働者が能力を活かして、熱心に仕事に取り組むとともに、企業業績を高めることにつながるよう、各企業・労働者の個々の状況に合わせた対応が必要とされています。
*1 平成30年度雇用政策研究会報告書 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00001.html
*2 2022年度 雇用政策研究会「議論の整理」https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000959523.pdf