こんにちは!
インターン生の道順さくらです。
今回はスペイン生まれの日本人で、映像の会社を日本で設立した、
三上"マテオ"俊(みかみ まてお すぐる)さんにインタビューをしました!
実は私事ですが、私は春から一年、ワーキングホリデービザでスペイン・バルセロナに滞在する事を決め、スペインの映像業界で働きたく、それを社員の方々に伝えたところ…
「映像、スペイン…さくらさんのやりたい事と共通している方がいるよ…!今後のためにも是非会いに行きましょう!」と言ってくださり、マテオさんに会う機会をいただきました。
マテオさんの会社は「株式会社LOBO Co., Ltd.」。
ビル街の中に可愛いスタジオがあり、ちょうど社員の奥村さん、橋本さんと時計ブランドの撮影をしていました。
ちなみにマテオさんの愛犬オソくんもいて、私たちを元気に出迎えてくれました!
マテオさんは日本人の両親からスペインで生まれました。
1歳〜11歳まで、当時ご近所にお住まいだったスペイン人の夫婦(おじい様、おばあ様)に懐いて、よく面倒をみてもらっていました。
スペイン人のおじい様はダンサー、おばあ様は歌手・役者で、マテオさんのお母様もアートが好きだったそうです。
ー映像業界に入ったきっかけは何ですか?
マテオさん:アメリカで映像の会社を手伝ったことです。
アメリカ・ニューヨークに渡り4年ほど滞在し、ファッション系のインタビューや広告など…沢山の作品に携わりました。
でも疲れてしまって…。
もう少し人間らしいドキュメンタリー的なものを作りたいと思い、日本へと環境を変えることにしました。
ーなるほど…その後日本ではどの様に活動していたのですか?
イノベーター・ジャパンを含め2社で働いていました。
で、最初の時点で自分は雇われるのが苦手だとわかりました。笑
イノベーター・ジャパンを辞めたのはプライベートでの事情もあったので、そんなに嫌いだったとは言いません!笑
僕がイノベーター・ジャパンで働いていた時は、会社の雰囲気はもう少し硬く、出勤時間もきっちり決まっていました。今は時間や働き方がもっと自由になったと聞いています。
でも、自分の意見と真反対の方が同じチームになったりして、雰囲気など微妙な相性があると思うので、それが合わない方と働かなければいけないとなると、辛い部分もありましたね…。それって効率も悪いし。
他の会社だと分野が絞られるので、自分と意見が一致する方と働く事が多かったですが、イノベーター・ジャパンでは色々な分野の人が集まり、そこから何かを生み出そうと考えるので、逆にそのような問題も出てくるかと思います。
それで自分が今経営者になって思うのは、人を採用することが怖いです…。
自分と価値観が一致する方で、手伝ってくれる人はそう簡単に見つからなくて。
渡辺さん(イノベーター・ジャパンCEO)は寛大に色々な人を信じてみようとしていて、それは本当にすごいと感じました。
ーその後、なぜ会社を設立することにしたのですか?
とにかく自分のリズムで働ける環境を作りたかったからです。
先ほども言いましたが、自分は雇われることに向いていなく、自分のやりたい事をやるには会社を創るしかなかったと思います。
ー会社の仕事内容はどんなものですか?
現在、会社の6割の仕事が私たちが主体となって撮影するもので、今回の「時計」などの商品撮影や、ウェブ用のプロモーションビデオ、企業インタビューなどです。
そして4割が海外の撮影チームのプロデュース。
日本での撮影の補助、ロケーションや人材確保、移動手段の案内などを担当します。
私自身、英語、スペイン語、日本語の3ヶ国語話せて、業界ではなかなかいないとは思います。北米、南米、スペインからのオファーが多いですね。
あとは奥村さんがグラフィックもやっています。ウェブサイト制作は分野外としています。
携帯、PC、色々な媒体が増える中で、やはりどれか1つのメディアに対応するものを作る方が私たちには合っているかと…
「映画」は自分が決めたスクリーンで、全て手法もこちらに決定権があるのですが、ウェブは媒体が何通りもあるので、当然見え方も変わってしまい、細部まで伝わらなかったり、最悪自分たちが思ってもいなかった感じ方をされてしまいますよね。
ーこれからこの会社をどんな風にしていきたいですか?
会社を大きくするつもりはないです。
これ以上大きくすると、スペインに2週間行くとか、自由が効かなくなるので。笑
あともう1人は欲しいですが、無理していれたくはないですね。
最近は先ほどの「4割」に該当する、海外からのオファーで撮影のプロデュースをする仕事が増えてきていて、日本の業界とは仕事の進め方が違う部分もあり、勉強になる部分が多く、もう少しその分野の仕事を増やせればいいなと思っています。
今度ヨーロッパのドラマシリーズを手伝うのですが、7話あるうち最後のエピソードが日本での撮影で、音を一切撮影しない作品です。サイレントのドラマなんです。
スペインの監督で、ずっと映画を撮っていた方で、今回初のシリーズ作品を撮影するそうです。ヨーロッパの作品は品があり、仕事として撮影時に学べることもありますが、その作品自体の芸術性をしっかり感じることもできます。
でも日本の会社からも受注する限り、日本の業界のルール(仕事の進め方)に従っていくべきだと思います。
細かいところまでしっかり決めてやりこむなど…日本には日本の映像業界のやり方やシステムがあるので…。
現在、商品撮影・広告をしているブランドの9割は海外ブランドで、彼らは私たちの会社に制作して欲しくて頼んでくれていてすんなり進むのですが、日本の会社からは安く制作できる会社として注文がきて、審査も厳しいです。
すごい細かいところまで気にしているんですよね。
ブランドを大切にするのはいいのですが、あまりにも他人の目を気にして制作するのはよくないと思うし、後から色々意見を言われるのはちょっと厳しいですね…。笑
ー映像でこだわっている部分はありますか?
撮影は基本橋本さんが。笑 僕はもっとプロデュースやお金の面を。
絵コンテが必要な時も奥村さんがやってくれていて…自分なにやっているんだろ!笑
でもだんだん会社が作る広告や映像がしっかり「映画」に寄ってきているなぁと思って。私も橋本さんも映画が好きで、でも生きていくためには「商業的」なものも必要で、少しずつ自分たちが望む映像に近づけたり、そのような作品をより多く創っていきたいですね。
ーやはり「広告」の収入源が大きいのですね…
そうですね。それでも会社設立当時は厳しかったです…。
二週間ずっと撮影・制作しても5万円とか。
作らせてもらえるだけよくて、完全に足元をみられていました。
日本の映像業界は厳しいですよ!
ねられない。帰れない。シャワー浴びれない。外国だともう少し効率がいいのですが。
ーそれでもマテオさんの会社はドメスティックな日本の広告・映像業界のなかでも、海外との交流があり、雰囲気が全く違うように感じます。
確かに日本の他の映像会社と一緒に働くと「ゆるいね」って言われます。笑
他の会社は本当に厳しいですよね。
ーじゃないと現場が回らないのですかね…?
橋本さん:古い人が多いのだと思います。
私が前働いていた時は24hシフトで。10-10時みたいな感じでした。
シフトがあるだけよくて…。
週に一度家に帰る事ができたらいいという状況の友達もいました。
でも待機する時間が永遠に続くとか、先輩が終わるまで待つとか…。
無駄な時間が多かったです。
マテオさん:意味があるならいいけど無駄なら嫌ですよね。
最近、思い込んで行動する事が「怖くて」、電車に乗っていても「電話は迷惑」というマナーがありますが、それだと普通にしゃべっているのはどうなんだろうと感じたり、そのまま頭の中に埋め込まれて行動するのが怖くなりました。
…なので社員にも休みたい時は休んでもらいたいし、意味なく縛る事はしないようにしています。
ーどんな映画が好きなんですか?
本当の人生の苦労が伺える映画が好きです。
ドキュメンタリー系のような…「完全なドキュメンタリー」ではないのですが。
好きな映画は『ハピネス』(1998年)です。
ニュージャージー出身のドット・ソロンズ監督作品なんですが、人間のトラブルをうまく描いていて…是非一度見てみてくだい!
ー日本の映画についてどう思いますか?
個人的すぎる映画が多いですよね、表面的でちょっと幼いです。
日本の映画はお金もないし…。
最近考えることがあるんですよ。「なんでバイトテロがあるのか。」
日本の飲食業界安すぎ。それ以外の業界も安すぎ。映画もアートも。
ヨーロッパの銀行は何パーセントかの利益を芸術振興に使わなくてはいけなくて、ギャラリー・美術館もほぼ銀行の所有物なんです。日本では銀行が逆にお金を取っていくばっかりで、制度的にも考えていくべきですよね。国の文化を作るためにも、もう少し重視するべきです。これは日本にきて一番ショックに感じたことです。
ー「日本人」「スペイン人」などのアイデンティティについて何か思うことはありますか?
もう関係ないですね…。この歳になってくると。笑
でも日本に来た当時は詰まりました。ひどいシステムや習慣が沢山あって。
子供もいるのでやはり責任感がもっと伴ってきて、しっかりした収入を得たかったですね。やはりスペインだと失業率も高いので…。
そして安定して自分の会社を運営できそうな状況になってきたので、このままもう少し続けてみようと思いました。全部畳んでまた違う場所で活動するのも大変なので。
この会社を始めて、いろんなお客さんに出会って。その縁を全部リセットするのは惜しいですね。でもなんかあったら飛んでしまうかもしれませんね!笑
「日本人、スペイン育ちとしてこうしたい」という意思もあまりないです。逆にその他の国ということも気にせず、1つの注文、1人の人、1人のお客様として考えていきたいです。
ー今度私がバルセロナに行くにあたって…
未知なことにチャレンジするのはいいですよね。
私もメキシコに1年くらい居たんです、最初はビザも取らないで。
物価の安いメキシコに住みながら、給料はリモートで働いているスペインやアメリカの会社からもらっていたので…王様みたいな生活ができましたよ。笑
メキシコではブランディングの会社で美術館の新しいイメージを作ったり、ファッション系の広告などをやって…楽しかったですね、大変だったけど。目の前で人が殺されるとか…
今でも、もっと色々な所に行って、色々な体験をしたかったと感じます。
是非頑張ってください!
マテオさんありがとうございました!
日本の映像業界においてグローバルに活躍するマテオさんの貴重なお話を伺えました。
それでもドメスティックな業界においてグローバルな会社を運営する苦悩が多々あり、まだまだ厳しい世界なんだと感じました…。
社員同士とても仲が良く、CED (チーフ エグゼクティブ ドッグ)もいる暖かい雰囲気の会社でした!
株式会社LOBO Co., Ltdについて ↓