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なぜ、デザイン思考がビジネスの場に必要なのか?

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Innovator Japan Editors

※この記事は「ビジネスデザインとは何か?」シリーズ前後編に続く連載となります。
→「ビジネスデザインとは何か?」はこちら

デザイン思考とは

前回の「ビジネスデザインとは何か?」の記事の中で、“デザイン思考(Design Thinking)”という用語に触れました。

デザイン思考は、ビジネスデザインを実現するための思考法で、デザイナーが思考するプロセスをビジネスに当てはめたものです。1-2_1
ここでのデザインとは、単なる意匠的な観点だけではなく、より根本の「設計」の段階から事業全体をデザインしていくための「戦略的な考え方」を指しています。

ユーザーの視点に立ち、仮説を立て、その仮説の中で新しいビジネスモデルを構築し、トライアルを重ねながら軌道修正することで、画期的なイノベーションと競争上の優位性を生み出します。1-2_2

デザイン思考の背景

現在、多くの企業がデザイン思考を取り入れています。AppleやGoogle、任天堂やYahoo! JAPANなどの大企業だけではなく、世界中の多くの企業がこの思考法をビジネスの場に取り入れようとしています。

その背景には、技術革新や社会経済システムの変化などの環境変化、市場構造の変化が激しくなってきたことが挙げられます。特に2008年のリーマンショック後、より一層、先行きが見えない不透明な状況に置かれた多くの企業にとって、従来のような経営方法では太刀打ちできない事態となりました。1-2_3グローバル企業の戦略アドバイザーを務める「戦略の第一人者」として知られるロジャー・マーティン氏は、2009年発刊の著書(*1)の中で、以下のように述べています。

------------

・多くの企業が研究開発費を費やし、コンサルタントを雇いながら、期待はずれの結果しか得られていない
・それは「分析的思考」に頼りすぎているからだ

------------1-2_4従来のような「皆が右肩上がりの時代」ならば、この先のことも予測可能であり、分析的に問題と対策を明らかにしていく分析的思考は有効でした。しかし現代は、先行きが見えない不透明な時代です。

マーティン氏が同書の中で、「革新して勝つためには、企業はデザイン思考を必要としている」と示しているように、変化の速さに対応するための「知識や分析結果を、そこから別の段階に押し上げる方法」であるデザイン思考が、より必要とされているのです。1-2_5

デザイン思考のプロセスとは?

では、デザイン思考とは具体的にどのような思考法なのでしょうか?

デザイン思考は、IDEO(シリコンバレーのデザインコンサルティング会社)が考案し、同社の創業者の一人であるスタンフォード大学教授のデイビッド・ケリー氏らが、同大学内に「d-school(d.スクール)」と呼ばれる研究所(The Hasso Plattner Institute of Design)を創設して、提唱したことにより広まりました。1-2_6

また、d.schoolでは、デザイン思考のステップとして次の5つを定義しています。

—----------

・Step1 共感(Empathize)
 ユーザーの行動を観察することで、本人も気づいていない本音や価値観、本当に求めていることを明らかにしていく

・Step2問題定義(Define)
 本質的な課題を見つけ、正しく問題設定をして解決策を生み出す

・Step3 創造(Ideate)
 課題解決のためのアイディアを、できるだけ多く生み出す

・Step4 プロトタイプ(Prototype)
 いくつかのアイデアを形にし、実際に試す

・Step5 テスト(Test)
 ユーザー実際に使ってもらい、設定した問題が解決されたかを検証する

—----------1-2_7デザイン思考の成功例をいくつも生み出しているAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏について、彼と「Apple II」の開発にあたったマーケティング専門家のレジス・マッケンナ氏は、NHKのインタビュー(*2)で以下のように述べています。

「スティーブは、いろんな店に行って買い物客をよく観察していました。人々がどういうものを欲しがっているのか、実際に人に会ってたくさん質問して、“市場と対話”していたんです。“こうだったら良いのにな”という物事の先を見る目はピカイチだったと思います」

これはジョブズ氏が「共感」や「問題定義」の感覚が秀でていたエピソードであり、また同氏が「デザインとは見た目ではなく、そのモノがどう機能するのかということだ」という言葉を残していることからも(*3)、製品をつくる過程において一貫して、デザイン思考を持つ人間が関わることが重要だと考えていたことがわかります。

iPodの開発においても、社内の開発者以外に、社外のデザイン専門家や心理学者、人間工学の専門家など35名が関わり、わずか11ヶ月で開発されたというエピソードも残されています。

当社代表の「ビジネスデザイン」に関する実践

当社においても、この「ビジネスデザイン」を実践しています。代表渡辺が、その経緯や詳細について語っています。

→インタビュー前編はこちら
→インタビュー後編はこちら

*1:Roger Martin『The Design of Business: Why Design Thinking is the Next Competitive Advantage』(2009年)

*2: NHK News WEB『デザインは、見た目じゃない』(2021年10月11日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211011/amp/k10013301671000.html

*3:同上NHK News WEB、バリー・カッツ氏へのインタビュー

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