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ウェルビーイングって何だろう?【実現に必要な5要素を紹介!】

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Innovator Japan Editors

最近耳にすることの多い「ウェルビーイング」。

いまや企業の経営理念や、大学入試にも取り入れられるキーワードです。直訳すると「よい・状態でいる」となりますが、では人間にとって「よい状態」とはどのような状態を指すのでしょうか?

約3年前からMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に「ウェルビーイング」を掲げてきた当社では、この度「ウェルビーイング」 に関するお役立ちコラムを掲載していきます。

1回目となる今回は、「ウェルビーイングの定義」について解説します。
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◆ウェルビーイングの定義

「ウェルビーイング」という言葉は、1948年に世界保健機関(WHO)設立の際に考案された憲章の中で、初めて用いられたと言われています。
WHO設立者の一人であるスーミン・スーが「病気を予防するだけでなく、積極的に健康を促進する重要性」を提唱して、憲章の中に取り入れることとなりました(*1)。
apple憲章の前文では、ウェルビーイングについて次のように言及されています。

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〈前略〉
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳*2)
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日本WHO協会は、well-beingを「すべてが満たされた状態」と訳しました。一時的に感じる「幸福感」とも違った長期的な意味での幸せな状態を指しています。
また、厚生労働省が2019年にまとめた『雇用政策研究会報告書 概要(案)』(*3)では、一人ひとりの豊かで健康的な職業人生を実現するために、ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環を目指すことを提示しました。
そこでは、ウェルビーイングとは「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること」を意味する概念であるとしています。

ウェルビーイングの指標とは?

ウェルビーイングな状態がどれくらい実現されているかを考える時に指標となるものの一つが、「幸福度」と呼ばれるものです。その幸福度に関して最もメジャーな調査といえば、「世界幸福度調査(World Happiness Report)」が挙げられます。
この調査は、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年行っています。北欧が上位につけ、先進国の中で日本はかなり低い位置にいるという結果を覚えている人も多いでしょう。
WHR参考:World Happiness Report 2022(worldhappiness.report)

ランキングの基になったデータは、アメリカの調査会社・ギャラップ社が各国・地域の各3,000人程度に対して行った世論調査です。そこで回答された現在の生活の満足度の値について、SDSNが一人あたりのGDPや健康寿命などの項目を用いて分析し、順位づけが行われました。
そして、そうした幸福に関する調査の基になるデータを提供し続けているギャラップ社が、「ウェルビーイングな状態」の要素として提示(*4)したのが、以下の5つです。

ウェルビーイングに必要な5つの要素

1.Career Wellbeing(仕事の幸福)

キャリア構築に関して幸福な状態。仕事面での充実だけを指すのではなく、家庭やプライベートとのバランスを考えるワークライフバランスが重要な要素です。両面の充実感を含め、適切にバランスを取り、両立できていることに幸福感を見出します。

2.Social Wellbeing(人間関係の幸福)

社会とのつながりに関して幸福である状態。学校や職場、家庭など自分が属している場所や、社会から得られる人間関係やつながりへの満足感、信頼感、安心感などが該当します。

3.Financial Wellbeing(経済的な幸福)

経済面に関して幸福な状態。現在の収入や資産への満足感や安心感がその要素です。必ずしも収入の多さに直結するのではなく、自分にとってその収入や資産が十分であるかが指標となります。
また、自らが持つ資産を他人のために使うことができた時(寄付等)にも幸福を感じるとされています。

4.Physical Well-being(身体的な幸福)

身体的に幸福である状態。睡眠と適度な運動、食事を心がけることが、体の健康につながります。

5.Community Well-being(地域社会の幸福)

自分の属するコミュニティとのつながりに関して幸福な状態。家庭・職場・学校・居住地域など各コミュニティとのつながりの中で、自分がコミュニティに貢献することや、お互いに影響を与え合うことで、幸福感や充実感を感じます。

◆ウェルビーイングは周囲に伝染する?

ギャラップ社は、これらの5つの要素がそれぞれ満たされた時、人は「ウェルビーイングな状態」にあると提示しています。
また、同社が50年以上かけて150ヵ国で実施した調査の結果を分析した結果をまとめた書籍(*4)には、「個人の幸福はそこで完結するものではなく、周囲の人に伝染する」とも書かれています。
上場している大手企業の中に、「幸せ」という言葉を理念の中に入れる企業が増えてきているのも、「従業員一人ひとりのウェルビーイングが、組織全体にとって良い影響を及ぼす」という考えがあるからでしょう。

次回以降は、ウェルビーイングに関する政府の取り組みや、企業の取り組み事例などについても、お伝えしていきます。

*1 健康だけでは、もはや「ゴール」ではない 藤田康人のウェルビーイング解体新書【2】https://www.asahi.com/sdgs/article/14615690

*2 日本WHO協会 https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

*3 平成30年度第8回雇用政策研究会議事次第 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00001.html

*4 トム・ラス、ジム・ハーター著、森川里美訳『幸福の習慣』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年