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「ビジネスデザイン」とは何か?【前編】

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高尾 有沙

課題を再定義するための「ビジネスデザイン」

ーー本日は、当社代表取締役社長であり、社会情報大学院大学准教授でもある渡辺さんに、「ビジネスデザイン」についてお話をうかがいます。まず、ビジネスデザインとはどんなものでしょうか? 当社はビジネスデザインを創立当初から掲げていますが、その経緯についても教えてください。

我々が考えているビジネスデザインとは、「既存の事業・プロジェクトがあるなかで、それをマーケットに合わせてアップデートしていこう」という概念です。今で言うと、当社でも手かげている「DX」という概念と、ニアリーイコールになりますね。あdgfsっgイノベーター・ジャパンという会社を始めた時、「IT・デザイン・マーケティング」という3つを掲げました。そのなかの「デザイン」に関しては、グローバルで言う「Design」の概念と、日本で言う「デザイン」の概念のギャップが大きかったので、まずはそのギャップを解いていきたいという思いがありました。なので、創業時から自分の名刺にも、「ビジネス・デザイナー」と肩書きを付けていましたね。

ーーグローバルの「Design」と日本の「デザイン」は、具体的にはどのように違うのでしょうか?

日本で言われているところの狭義の「デザイン」は、ビジュアルなど意匠的な観点で整えていくことを指します。一方、グローバルで言う「Design」はそうではなく、もっと大元を辿った「設計」の部分を指しています。何らかの意図・企画があるなかで、そこに合わせて物事の形を変えていく。戦略のような意味が含まれます。

我々が掲げている「IT・デザイン・マーケティング」のなかのデザインは、こういった広義の意味の「Design」です。20220603-P1050441

ーー特に日本では、非常に狭義なところに終始してしまっているのではないかという課題が、渡辺さんの意識のなかにあったということですね。

この2つの違いについては、個々のクライアントとの間でも「認識のズレが生じることが多いな」と感じることが多いです。やはりこのギャップは課題だと思っています。

ーービジネスデザインは最近、色々なところで目にするようになった気がします。MBAや経営的課題解決と、ビジネスデザインとでは、何が違うのでしょうか?

自分が卒業させてもらった事業構想大学院大学は「プロジェクトデザイン」という学位を掲げていますが、ここが創設の頃から言っていたのは、MBA(Master of Business Administration)は「問題解決のスキームが経営工学である」ということです。つまり、基本的には、過去の成功事例・失敗事例を学びとして、それを今現在の事業にどう当て込めるかという話です。

前提としての社会環境が過去のケースと同じなのであれば通用しますが、そこが過去の成功事例は参考にはできません。そうしたなかで「プロジェクトデザイン」という概念が出てきました。概念的には、前提条件が同じなかでの課題解決が「MBA」、前提条件が異なるなかで課題を再定義していくのが「ビジネスデザイン」ということになります。

ーーなるほど。20220603-P1050451

もちろん個々のクライアントの課題解決を我々がやっていくなかでは、いろいろなパターンがあるし、そもそも再現性の低い課題に取り組まなければならないことも多いです。そこは、臨機応変に考えながらやっていくという感じですね。

学問としての「ビジネスデザイン」は必要?

ーーいま、ふと「前例がないものは、再現性が低いんじゃないか」という疑問が浮かびました。学問としてビジネスデザイン自体が体系立つことは、難しいのではないでしょうか?

例えば、ITの世界は日進月歩で変わっていて、20年前の事業にITは全く関係なかったかもしれません。前提条件の話で言えば、ITの関係が一番大きく関わっているかもしれない。「全ユーザーがスマートフォンを持っています」という前提も、10年前にはありませんでした。そういった「ユーザー側の変化」にうまく事業を合わせていく、その結果としてIT最適化がなされる。それこそがDXだと思うんですよね。あsfg
ーー再現性がないなかでも、ちゃんと社会環境を読み解けば、今のなかで横展開できることは多々あるということですね。

そうです。我々が実際にクライアントにソリューションを提供するなかでも、とある業界のなかでは当たり前のようにやられていることを別の業界に持っていくだけで、それこそがものすごく新しく、イノベーションになるということがあります。業界を幅広く見ることで、業界の壁を越え、成功事例を持っていくという手法は、今でも普通にやっていることです。

ーーよく言われることですが、MacやAppleは、前例の焼き直しでは全くありませんよね。ああいったものを「ひらめく」というのは、どういうことが起きているんだろう?と疑問に思います。こういったひらめきのようなものも、学問にできるのでしょうか?

結局、社会って皆さんの目の前に平等にあるものなんです。そのなかで、チャンスに気づく人・気づかない人がいる。その感覚の差は、「ちょっとした違和感に気付ける力」だと思っています。

例えば普段通勤で通っている道の途中で、新しいお店に気づく人と、そうでない人がいます。そういった感覚と同じようなもので、例えば困っていることや、「こうしてあげればよくなるのに」ということに気付けば、それ自体がビジネスの種になりますよね。japan-g637876881_1920

「かっこいい・美しい」の物差しを作るのがアーティスト

ーー自分の感じた違和感に、どれだけ目を向けられるかということですね。

いま当社で始めている「URASAN」というメディアに関しても、そういった気づき、アート的な感性を大事にしています。

自分が社会情報大学院大学で講師をしている時にゲストでお招きした、teamLabの猪子寿之さんは、アートとビジネスの違いについての話のなかで、「人々には必ず『かっこいい・美しい』という物差しがあって、その上で動く。多くの人は、誰かに定義された物差しのなかで動いていて、日本人は特にその傾向が強い」と話していました。そして物差しを定義するのが、アーティストの役割なんだと。

つまり、「世の中にある歪みに気づく。気づいたものを課題して定義する、可視化する」ことをアーティストがやっていて、そこに基づいて何かアクションをしているのが我々だと。だから、彼らが感じているもの・見ている世界、感性の部分を、もっと知れるといいなと思いました。「URASAN」というアートメディアの運営は、そうして始まりました。あgsdfs

ーー次回も引き続き、ビジネスデザインをテーマに、昨今のビジネスデザインの潮流や、ビジネスデザインの第一歩は何かについて、お話していきます。本日はありがとうございました。

後編へ続く