こんにちは、高尾です。本記事では前回に引き続き「ウェルビーイング」をテーマとして、弊社の渡辺さんにお話をうかがいます!
「ウェルビーイング」な働き方を実践! &donutsプロジェクト
ーーよろしくお願いします。まずは、当社がウェルビーイングを意識して取り組んでいる具体的なプロジェクトについて、教えてください。
僕が制度設計をしていく上では、常に「ウェルビーイング」をベースとして考えています。5年前からプロジェクトとして動いている郊外での職住近接プラットフォーム「&donuts(アンドーナツ)」はその一例です。その構想段階まで遡ると、「まだまだ保育園などのインフラが足りていない状態だから、結婚・出産すると一気に働きづらくなる人が多くなる」という問題意識がありました。能力も、働きたいという意志もあるのに、環境が整っていないから働けないという状況がある。僕は「こんなにもったいないことはないよな」と思っていました。
それで、「だったら、保育園というインフラに頼らなくても働ける環境を作ったらいいんじゃないか」という発想のもとにできたのが、職住近接プラットフォーム「&donuts」でした。
ーー&donutsは現在、オンライン・オフライン問わず数十人が所属する大所帯になっていますね。住まいや住まいの近くで働ける、場合によっては在宅で働けることで、ウェルビーイングに近づいている実感はありますか?「僕が」というより、働いているメンバーたちからそういった言葉をもらうので、やってよかったと思っています。この場合、メンバーは「自身のウェルビーイングの実現」だけではなくて、当社の事業においてもすごく貢献してくれているわけですしね。
前回お話しした「歯車」の話について言えば、&donutsプロジェクトで「職住近接のプラットホームを用意した」ことが「社会全体を構成する“歯車”のかみ合わせを調整した」一つの例になると思います。歯車のかみ合わせを調整する。これだけで、お互いがHappyになれるだけではなく社会にも良い影響があるという、三方良しな素晴らしいことだと思っています。
これは一例に過ぎません。こういったことが実現できる種は、世の中にたくさんあると思います。今後もできればそういう社会の素朴な課題を解決できるようなサービスに繋げていきたいし、当社の会社の設定を考えていく上でも、その辺りは常に考えていなくてはいけないと思っています。
チームとしてカバーできる組織づくりが重要
ーー&donutsだけではなく、当社全体の働き方は、従業員の目線で「働きやすい」と思います。日頃から「人間だから体調不良や不測の事態も起こる」とか、「家族の都合があるということを申し訳ないと思わなくていい」ということを、渡辺さんから従業員に伝えていますね。
意識せずとも、それがベースになっているという感覚ですね。だからこそ、「個人の力で解決するのでなく、チームとしてカバーできるようにする」ことを大事に考えています。例えば、今もコロナ禍で週の出勤日数を変動させていますが、元々コロナの前から、「平日5日、毎日会社に来るのは、どこかで不整合が起きているのではないか」と考えていました。「週3はオフィスで、残りの週2は自由な場所でできる」というようにすれば、その方が都合がいいのではないかと。もし、そういうことをする会社が都心部に増えれば、マクロで言ったら3/5だから、人の移動が「60%」になるんですよ。
ーーそうなると、満員電車の混雑もだいぶ緩和されてきますね。
そうです。もちろん通勤しないと働けない人もたくさんいるわけですが、そういう人たちも混雑が解消されれば通勤がラクになるから、みんながHappyになりますよね。今はオフィスへの出勤を週1〜3日と変動させながらやっていますが、そういった余白や幅を持たせる組織や仕組みづくりは、今後も必要かなと思います。
ーー出勤日数の変動や、チームとしてカバーできるようにという当社の組織づくり発想は、どこから来ているのでしょうか?
実は、着想は「北欧の教員の働き方」から得ています。日本の先生たちは、平日は担任をやって、休みの日は部活をみないといけません。でも、北欧では違います。デンマークの学校には、担任の先生以外に必ずサブの先生がいて、きちんと先生たちが休める制度になっていることを知りました。
「属人性を高くしないと回らないのは、組織設計として間違っている」という話も聞いて、たしかにそうだなと思いました。
日本がデンマークとこれだけ違うのは、日本の減点主義・加点主義にも起因すると思います。日本だとデフォルトが「満点」で、風邪引かない・休まないという前提が立てられている気がします。でも、満点ではなくて「不完全なもの」だと前提すれば、もっと違った仕組みになりますよね。
ウェルビーイングの発想は、当社のサービスやプロダクトにも
ーー組織づくりにウェルビーイングの考え方がもたらされていることは分かりましたが、当社から出しているサービスやプロダクトについても同様なのでしょうか?
同様です。どのサービスも、最初のタイミングで僕が考えているのは「社会の歯車の、こことここが噛み合っていないな」ということです。
社会の課題と噛み合っていなければ、作る側も「力を入れて作りたくない」と感じてしまうし、やりがいや楽しみを感じている人が作ったサービスでなければ、相手にも使ってもらえません。ですから当社のサービスは、「埋もれているポテンシャルを引き出すためにやっているもの」が多いのです。それは当社のミッションに従っているものでもあるし、それが当社の生業とするものです。
ーー先月リリースしたアートメディア「URASAN」も、そういったことを意識して作っているのでしょうか?その通りです。我々が何かができるとか、おこがましいことを考えているわけではないですが(笑)。原体験として、僕がイノベーター・ジャパンを始める前、海外で仕事をすることが多かったので、フランスやパリに行くことがよくあったんです。
そこで本屋に行くと、日本のコミックが結構並んでいるんですよ。でも表紙周りを見ると、“Publisher”が日本じゃなくてアメリカだったりします。せっかく価値が高いコンテンツを出しているのに、ビジネスとしては他国に持っていかれてしまっていると感じました。
ーーなるほど。「価値」に気づいている外国の企業や個人に、それを取られてしまっていると。
そうです。利益がきちんと還元されていれば、「それはそういうものだよね」と思えばいいんですけれどね。実際はそうではない。もっと日本のクリエイターたちが海外でのチャンスに気づいて、自分たちから出ていければもっとチャンスがいっぱいあるんじゃないか、と思います。日本は島国で言語的障壁があるので、みんなにそれをやれと言っても難しいのですが…
だから「URASAN」の根底としては、「チャンスと価値を生み出せる人たちをコミュニティ化することで、いろいろなものが生まれる」という発想があります。
ーー実際に「URASAN」をリリースしてから、サイトを見てくださった方に「この人も出してもらえないか」という連絡を複数いただいています。そういった点から見ても、意味のあるものなんじゃないかなと感じています。反響をいただけるのは、ありがたいことです。もちろん「URASAN」がそういった役割を担えたら嬉しいけれど、サービスやメディアの成功は直接的なところだけではありません。そういうのを傍目に見ながら「勇気を出して動く人」が出てきてくれたら嬉しいなと思いますね。
ーー当社だけではなく、当社の取り組みを見た周りの人が動いたり、社会全体がいい方向に進んでいくといいですよね。
「&donuts」もそうですね。別に、「&donuts」で全国の人材を一網打尽にしたいと考えているわけではなくて(笑)、「そういう畳み方でもいけるんだ!」「そういう働き方もありえるんだ!」と誰かが気づいてくれたら、それでいいじゃないかと思います。同じようなことをする企業が増えてきてくれたらいいですね。
明日から取り組もう! 「ウェルビーイング」の第一歩
ーー最後に、これを見ていただいている方に向けて、「明日から始められるウェルビーイングの第一歩」について、渡辺さんのお考えを教えてください。
社内でもよく言っていますが、まずは「自分自身がどういう状態になることが、Happyなのか」を知ることです。知らないと近づけませんからね。自分の心に手を当てて、一度考えてみるといいと思います。
あとは、次のステップとしては、「自分が考えていることを、素直に相手に伝えること」です。そこで気を使ったりとか忖度して言わないでいると、結局その人が何を考えているのかが、誰にも分かりません。ーーたしかにそうですね。
「自分はこうしたいんだ」ということをみんなが表現していれば、徐々に最適化のメカニズムが働いていくと思うのですが、それを隠していると効かなくなります。そして、本人もフラストレーションが溜まります。だから、まずは意思を表明することが重要かなと思いますね。
ーーまずは自分にとってのHappyが何なのかを考え、それを周りに伝えていくことが、最適化の第一歩ということですね。みなさんにとっても、今回のインタビュー記事を、「自分にとってのウェルビーイング」や「自分の大切な人にとってのウェルビーイング」を考えるきっかけにしていただけたら幸いです。
本日は、ありがとうございました!