こんにちは、メディアコンサルタントのペロです。
本記事は弊社のアドベントカレンダーの14日目の記事です。担当から「メディアのGrowth」について書いてよ、と言われたので今回はそれについて書きましょう。でもまずはド初歩です。
さて、メディア事業を成長させるには、何をすればよいでしょうか。
外部流入チャネルを増やす?
SEO対策する?
SNSに力を入れる?
プラットフォームと連携する?
コンテンツを増やす?
動画を載せる?
音声ニュースを読む?
UGCを作る?
リピーター率を上げる?
プッシュ通知を導入する?
メルマガをHTML化する?
回遊率を上げる?
レコメンドエンジンを入れる?
アップセル施策を取る?
MAを導入する?
キャンペーンする?
・・・無数とも言える施策のうち、どれが初手として正解でしょうか?
いいえ、もしまだ未実施なら、(どんなビジネスでも同じですが)まずは市場の把握、事業計画をしっかりせねばなりません。メディア事業(ウェブメディア)も同じです。本記事はトップダウンの目標数値に悩まされながら施策の沼にハマって消耗するデジタルメディア担当/ウェブ編集者の方に捧ぐものです。
マーケティング無しにプロモーション施策だけ実施すべきではない
よくウェブメディアの事業的成功の指標としてPV(ページビュー)数や広告事業の売り上げ、またはサブスクリプションやECなどの売り上げが挙げられることが多いですが、貴社はそれらの目標設定、どう決められていますか?
多くのウェブ担当者が、経営陣や上司から課せられた「昨年度の1.5倍のXXX万PV」みたいな雑な成長曲線を追いかけていたり、「今年度の売上XXXX万円を目指せ」とか何を根拠に算出されたのかよく分からない数字を課せられていたりすることでしょう。
お気持ち、お察しします。
また、ウェブ担当者側として動かれてきた方々からは、よく「WEBマーケティングやらないといけないんです」「WEBマーケについて学びたいです」という声をお聞きしますが、大抵そういう方々の多くは「プロモーション」の事を指して「マーケティング」と仰っていることが多いです。
間違ってはいませんが、マーケティングは本来「プロモーション」と同義ではありません。
上述のような雑な目標数値に追われてプロモーション施策だけ、とりあえず打てる手段が欲しくてその考えに至る気持ちもお察しします。費用対効果が良いかどうか分からない、中長期的にはマイナスになるかもしれない施策も含めてめくらめっぽうにプロモーション施策を、とりあえず社員集めてブレストやって出た沢山の施策案を、PDCAのdoだけ繰り返そうとするパターンを目にすると心が痛みます。ああ日本の生産性の低さはここから来ているのかと。
この沼にハマるのを防ぐには、担当者側からボトムアップで目標数値を決めるしかありません。
自社メディアを見てくれる人間の数を推測しよう(簡単にでもいいので)
まず貴社のウェブサイトで使用している言語は何でしょうか?
そりゃ日本語だろって?はい、ではまずその時点で約1億2500万人ですね。
ターゲット読者はどういう人たちでしょうか?
医療業界向けメディアですか。製薬・医療機器等もターゲットですか?看護婦さんや介護士さんも読むメディアですか?
あぁ、医療施設の経営層向けですか。では、ある調査によると国内の医療施設数は約10万ほどだとの事ですので、経営に関する情報収集ニーズを持つ方が、クリニックや大きな病院も平均して1施設あたり平均3人居ると仮定すると、約30万人ぐらいは居るかもしれませんね。
その中で潜在ニーズを除外し、毎月情報を能動的に取得しようとするのは何割ぐらい居るでしょうか?忙しかったり興味なかったり、半分ぐらいですかね?では国内市場には、ターゲット読者が約15万人ぐらいいると仮定しましょうか。
今の御社のメディアは業界で何番目ぐらいですかね?医療施設の経営層ならみんな知ってるレベルですかね?
知ってる人も居るレベル?あぁ、ではクープマンの目標値から推定すると、現状のシェアは5~6%ぐらいかもしれませんね。となると、貴社メディアを定期的に利用する「ファン」の数は7500人ぐらいでしょうか?
「とりあえず100万PV!」を1年で達成するにはどれぐらい投資が必要か
どうでしょうか?近そうな、説得力のある数値になっていそうでしょうか。
雑にやってみましたが、いわゆるフェルミ推定です。上記のようなファネルを描き、マーケット内におけるターゲット読者の総数と、現状の自社の立ち位置を最初に推測することで、少なくともワケの分からない目標に翻弄され、めくらめっぽうに施策を打つ必要はなくなります。
たとえば仮に15万人のマーケットに対して毎月100万PVを目指すなら、マーケットの66%(10万人)に毎月訪問してもらったうえで、1ユーザーあたり毎月3セッション、1セッションあたり毎回3.4PVぐらいを目指していくような話になります。
専門業界向けウェブサイトなら、この目標数値はなかなか野心的・・・と言うか率直に言えば無謀です。
ライバルが全く居ないのであれば可能かもしれませんが、マーケットの66%といえばもう間違いなくトップシェア(=ターゲット層ならほとんどの人が知ってるメディア)です。
上述のフェルミ推定どおり、現状のシェア率が5~6%程度なら、MMD総研による2019年の国内スマホメーカーのシェア率で言うとファーウェイ社がApple社を超えようとしているようなものです。
不可能だとは言いませんが、相当高い壁であることは疑いようもありません。株主総会でそんなこと言ったら実現性についての質問が即飛んでくるでしょう。
仮に月間UU数が10万に到達しても、セッション/ユーザーが3、PV/セッションが3.4というのもすごく高い数値です。不可能だとは言いませんが、やはり1年やそこらで目指す数値ではないでしょう。
PV数を目標にするなら、さらに月次のコンテンツ配信本数やメールマガジン配信数、SNSの投稿回数やそのクリック数、連携先プラットフォームからの流入数などを交え、現状と理想の乖離を算出していきます。
サブスクリプション売上を目標にするなら、アクティブユーザー数や会員数、ゲストユーザーの登録率などを同様に算出していきます。
そうして始めて、仮に100万PVを目指すなら、どの数字/パーセンテージに対して、いつ、どれぐらいの時間、どれぐらいのリソースを投じれば、どれぐらいの成長曲線で目標に達することができそうか、が見えてきます。
その過程で、どの数字を細かく分析すべきか、どの数字ならまだ伸ばせそうか、誰をターゲットにどんなコンテンツを発信すべきか、どの施策が効果的で実施できそうか、採るべきプロモーション施策のヒントが得られるのです。
ここまで進めていれば、きっとあなたの手許には上司/経営陣への説明材料がたくさん集まっているはずです。現状の「ファン7,500人」からの「100万PV」自体が短期的目標として不適切であることを示す材料も見つかっているかもしれません。
重ねてになりますが、メディアを成長させるには思いついた/聞いた施策をかたっぱしから実施するのでは到底達成し得ません。リソースの無駄遣いです。
上司が適当に考えた目標を盲目的に追っていても達成し得ません。
何よりもまず、拙くてもいいので市場の把握と自己分析、それを踏まえた事業計画が必要なのです。
そうやって仮説と検証を繰り返していく体制やリソースの投資計画について経営陣から理解を得ねば、到底達成し得ない数値を今年度目標に据えたまま、自分の小手先でできる範囲のチマチマした施策で身を削ることになってしまいます。
経営陣はデジタルマーケティングのプロでもウェブメディアのプロでもないため、各メディアの主担当こそが、マーケットと自社の立ち位置を見据え自社事業の成長のしかたを理論武装し、ボトムアップで提示する必要があるのです。
とはいえ、もし分からない、不安だということがあればぜひ当社MediaDXプロジェクトチームへご相談ください。
メディア事業に特化した担当者が、ビジネスモデルからメディア構築、コンテンツ制作・運用、成長施策まで二人三脚でお手伝いできる体制でお待ちしております。
ちなみに明日のアドベントカレンダーは弊社期待の若手デザイナー安藤さんです。お楽しみにー!