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日々是好日で一期一会だから松無古今色に諸悪莫作衆善奉行

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このエントリーは、「イノベーター・ジャパン Advent Calendar 2021」10日目の記事です。

1年ぶりにOMOSANへお邪魔いたします、&donutsプロジェクトメンバーのmmです。

「表と裏」がテーマとのことで、実は家を2度買いましたとか、なぜか本を出版していますとか、ミルコ・クロコップよりアーネスト・ホーストが好きですとか、私の裏側っぽいことを書こうかと思ったのですが、自分からすると裏でもなんでもないありのままの自分なので、頓挫しました。

元来、「なりたい自分」のような理想像がなく、パブリックイメージをコントロールするセルフプロデュース力も皆無なので、100人にいれば100通りの私がおり、「それ即ちすべて私」と思って生きているせいでしょうか。

いわゆる「表と裏」のお話とは異なりますけれど、今回はこっそり「お茶」について触れようかと思います。

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おもてですけど、なにか

ここでの「お茶」とは「茶の湯」「茶道」のことです。

「茶道」を英訳すると「Tea Ceremony」。「お茶」とはお抹茶を飲むことだけにあらずということが、異国の言葉を通すと理解しやすくなるかもしれません。

着物屋さんや和菓子屋さん、美術館の茶席などで、お茶を習っていることが話題にのぼりますと、「どちら?」と尋ねられることがしばしばあります。

この問いに対し、私の場合は「おもてです」と答えます。

そうすると「あら、わたくしも」または「わたくしはおうら」と続くパターンが多いです。時折、「むしゃこうじ」「えどせんけ」「流派には属しておりませんで、独学です」といった返しが続くこともあります。

宗教で例えると……多方面からお叱りを受けそうなため自重いたしますが、英国のミルクティー論争にて「ミルクが先か後か問題」があるように、日本のお茶の楽しみ方もいくつかに枝分かれしています。枝分かれした理由はいろいろあるでしょうけれども、結局のところ、「お茶はどう楽しんでも楽しい」ということの現れなのではないかな?と私は考えています。

100人いれば100通りの「お茶」があって、いいのいいの。

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わからないほうがおもしろいでしょ?そうでしょ?

私は幼い頃から習い事を継続することが不得手な子でした。やめた習い事は数知れず。唯一、大人になっても続けている習い事が「お茶」です。引っ越しなどで途切れることはあっても、「あ、お茶にいこ」と再び通いはじめてしまうのがお茶なのです。

「お茶」は、10年習っても15年習ってもわからないことがたくさんあります。多分、一生、わからない。利休さんだってわかっていたわけではない(などと申すと多方面から…以下略)と思っています。でも、それがたまらなく面白くて、私の性に合います。

一般的に、お茶のお稽古というのは「茶事」という催しを部分的に切り離し、少しずつ習得していく形式なのですが、その部分的な部分も、季節や器が異なると変化してしまいます。「お茶」は、習ったはずなのに知らないということが無限(のよう)に生じる世界なのです。

「お茶」というと多くの方がイメージする少し泡のたった飲みやすいお抹茶は「薄茶」といって、茶事をフルコースに例えれば、最後のデザートのような部分になります。この薄茶ひとつをとっても、夏と冬では趣もフローもそこはかとなく異なるため、不意にお点前の流れが止まってしまったりします。

それがめちゃくちゃいい〜
真っ白な自分に戻れるよさ!
心許なくなった自分に季節を感じる〜

なお、お茶の季節は大きく分ければ夏か冬ですが、実際は春夏秋冬どころか、12ヶ月よりはるかに細かな季節があるので、タイミングを逃すと1年経験できないお稽古というのもあります。12年に一度しか触れることのできない道具というようなものも、ままあります。

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だって…すきなんだもん

「茶事」は、お花や掛け軸といった部屋のしつらえから使用するあらゆる道具、食事(茶懐石)の献立から濃いお茶(濃茶)のためのお菓子、薄いお茶(薄茶)のためのお菓子など、ありとあらゆることを、主催者(亭主)のコンセプトに沿って決めます。「お茶」は総合芸術と言われますが、「茶事」はまさにそれ。

コンセプチュアルアートみたいな催しなのです。

総合芸術なので、「お茶」へのハマり方も人それぞれ。茶道具(…と、まとめちゃうと広すぎるのだけど)に魅了されるひと、茶花(お花屋さんで手に入れるのは限りなくむつかしい花ばかり)に魅了されるひと、歴史との関わりに魅了されるひと、懐石料理を作りたくなっちゃうひと、おいしいお菓子を見つけるのがうまいひと、抹茶の出自(製造元や茶葉のブレンドの違いなど)に異常にくわしいひと、庭や茶室づくりにありったけの財産を投じるひと…など、面白い方にたくさん出会えます。

なお、私の聞いたお茶を始めたきっかけのなかで、最も印象的だったのは、70代の女性が話してくださった「お酒を飲めるから」というものです。

お茶は武家文化を中心に発達したため、長らく男性社会の交遊の場でした(ここから今の女性中心にいたる流れを紐解くのも面白いの〜)。そのため、茶事においては必ずお酒を飲むシチュエーションがあります。

ほんの数十年前まで、女性が公にぐびぐびお酒を飲んでいいシーンはあまりなかったのでしょう。「えぇ!?こんなにお酒を飲ませていただけるの?って嬉しくなっちゃってね♡」と話す、彼女のてへぺろはとても可愛かった。

かくいう私がお茶を習うことにしたきっかけは、初めて茶室でお茶を点てていただいたとき、お湯の音と水の音が違ったことです。柄杓から釜へお湯を戻すとき、また水を注ぐとき、音はまったく異なるのですよ。あの音は、お茶を点てる度に聞いているはずなのに、何度聞いても新しく聞こえます。

自分がお点前をするときのハイライトは、 袱紗を捌くときでも茶筅を動かしているときでもなく、あの音を聞くときです。

あと、冬にしばらく釜にかけておいた柄杓を、持ち上げる瞬間もすごく好き。

はい!

とぅるるるるるるっとした内容となってしまいましたが、お茶への愛情はこめました。
以前、&donutsのFBでもお茶のはなしをしています。こちらは短いですので、よろしかったら。


明日の「イノベーター・ジャパン Advent Calendar 2021」11日目の担当は、アイラブ♡ykkさんです。

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