HOME Design イノベーションが産まれる「生きた」企業に進化するのに必要なものとは?

イノベーションが産まれる「生きた」企業に進化するのに必要なものとは?

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Christer Windeløv-Lidzélius(ビジネスデザインスクールKaospilot校長@デンマーク)

By Anders Drejer & Christer Windeloew-Lidzélius


日本のみなさんこんにちは。クリスターです。
前回の記事では、企業がなぜ倒産してしまうのか、その原因について解説しました。
今回は、どのようにしたら倒産などの失敗を回避することができるかについて共有します。

なぜ企業は失敗するのか?

1905年における企業の平均寿命は、約70年でした。1世紀後の現在、その数字は20年にまで下がっています。倒産をして消滅してしまう企業の数が増えてきている証拠ですね。

そもそも、なぜ企業は失敗してしまうのでしょうか?失敗は外的要因の急激な変化や、経営者の力不足などによる、致し方ないものなのでしょうか?それとも、原因は別の部分にあり、回避する手段があるのでしょうか?

先日の記事では、企業や、この記事を読んでくれているあなたのような経営者がどうして倒産してしまうのかをお伝えしました。
それを踏まえて、どうすれば倒産を防げるのかをお教えしたいと思います。知りたいでしょう?

時代の変遷

1950年代から60年代にかけての経営は、少なくとも西欧の世界では非常に簡単なものだと捉えられていました。当時におけるマネジメントとは、成長するとわかりきっている経済市場の動向を分析し、それに向け準備するだけのものでした。

ちなみに、第二次世界大戦後の日本の状況は非常に特別で、高度経済成長期にはリーン生産方式や、自動車や家電製品をはじめとする新商品が多く生まれました。この成長は目まぐるしいものでした。
しかしながら、イノベーションを産む経営理論が世界全体に浸透するには数十年かかりました。

そのため、1970年代に入っても、「最高管理職は未だに合理的な経済人」- どんな場面においても必要な情報と知識を持ち合わせ、ロジックに基づいた最適な判断を下す人物でした。企業組織も論理的な分析とトップダウン経営によって統治・構成され、外部との交流などない閉鎖されたシステムだと捉えられていました。組織理論の有名な研究者であるラッセル・アッコフを始めとする何人かの学者は、当時から、「組織は外部のステークホルダーとの相互作用が生まれるようなオープンなシステムであるべきだ」と主張していました。しかし、アッコフらの声が企業やその経営者に届くことはありませんでした。

そんな中、1973年の冬、世界中の石油価格が4倍にも跳ね上がるという、政治家もアナリストも経営者も研究者も誰も見たことがないような前代未聞の出来事が起こりました。石油危機です。その影響は、甚大なものでした。
各国の政府は必死に対応策を練り、企業の経営者はパニックを起こし、「アクティブ・イナーシャ(勝者の奢り)」(※注 時代の移り変わりを無視し、過去の成功事例に依存するあまり、事業利益がより下がってしまうこと)の負のサイクルに陥ります。
ここでようやく、研究者たちは事業戦略は計画ではなくリーダーシップの問題であると気づいたのです。

経営理論革命

H.アンソフとロバート・ヘイズによる有名な書籍「From Strategic Planning to Strategic Management(戦略的計画から戦略的経営へ)」は、「日常的業務」(マネジメント)と「企業の未来創造」(リーダーシップ)という2つの経営者としての役割に関して、改革を起こす一冊となりました。
 加えて、市場のトップ企業として最低1つの危機を生き抜くことは、シナリオを想定して対応する技術や、組織は外部の環境の変化によって大きく変化するという事実の認知につながると主張したロイヤル・ダッチ・シェルによる研究のおかげもあって、その後の「経営」の姿は大きく変わっていきました。

 名高き哲学者ドナルド・ションは「もし組織内より、外部の方が変化が多く起こっているならば、その組織はいずれ消滅するだろう」と言いました。彼が、どんな組織のことを示唆しようとしたかは不明です。しかし、我々の経営に関する研究、考え、経営のあり方に起こった革命を踏まえると、この言葉は企業のマネジメントにも大いに当てはまるでしょう。

失敗の防ぎ方

そして以下が、私たちKaospilotが考える「失敗」の防ぎ方です。是非参考にしてみてください。

1) 現在社会に浸透している組織理論や経営モデルはその構造や仕組みのわかりやすさから、「機械」のようだと比喩されることが多いです。しかし、組織とは本来、外部のステークホルダーとの交流や市場の変化によって姿を変え、成長する「生き物」であるべきなのです。著名な企業戦略家の一人であるアリー・デ・グースは、自分の研究の中でこの企業のあり方を「生きた会社」と称しました。


2) 1)のアドバイスを実践するためには、経営者は、組織の中で一番学び、一番革新を起こす人材でなければなりません。つまらないルーティーン作業に終われるのではなく、将来を常に見据えた仕事に重点をおいてください。現在は、経営者の業務の8割が組織管理、残りの2割が戦略構想に使われています。しかし、これからの経営は8割が未来構想、残り2割を組織管理に充てるものであるべきなのです。

3) イノベーションの創出には時間がかかります。企業にとっての最適解を熟考し、アイディアを生み出し、学び続けなければなりません。ほとんど時間を組織管理、終わりの見えない会議、業績管理につかっている余裕はありません。なぜなら、会議や業績管理で使われる数字は、「過去」を表すものでしかないからです。それはまるで、バックミラーを見ながら車を運転するようなものです。経営者が見るべきものは、後ろではなく、前方 - 「未来」なのです。

4) 創造的になってください。未来の動向が予測できないなら、自分で未来を作ってしまえばいいでしょう。これを為し得るためにはこれまでとは違った戦略形成、ビジネス創作の手法が必要となるでしょう。私たちKaospilotが実際の講義で教える手法は、真新しいものではありません。ただまだ認知されていないだけで、十分に試行が行われており、その効果は証明されています。


上述した4つ以外にも、有効なアプローチはたくさんあり、企業が成功するには複数の手法を取り入れなければならない場合がほとんどです。しかし、常に経営者が考えるべきなのは、需要の変化を読み取り、時代に合わせて自分の企業が成長していくために使える手法がどれなのか?です。

今回は、企業がいかに失敗を防ぐことができるのかについてお話ししました。
次回は、これかの時代のビジネスにおいて必要不可欠な「イノベーション」について、その重要性を今一度解説したいと思います。

Thank you.

Christer

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