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なぜ企業は失敗するのか?

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Christer Windeløv-Lidzélius(ビジネスデザインスクールKaospilot校長@デンマーク)

みなさんどうも、クリスターです。今回は「企業がなぜ失敗するのか」について、これまで私たちが研究してきたことをみなさんに共有したいと思います。​

世界的なパンデミックで不確実性の高い社会において、どのようなことが企業の倒産につながるのでしょうか?

まず、私と共に組織ノベーションについて研究している、デンマークのオルボー大学教授のAnders Drejerによる動画をご覧ください。

なぜ企業は失敗してしまうのか?

失敗は外的要因の急激な変化や、経営者の力不足などによる、致し方ないものなのでしょうか?それとも、原因は別の部分にあり、回避する手段があるのでしょうか?現代社会では、市場の競争に勝った者に注目が集まり、倒産してしまった会社の責任者は、その原因についてあまり話そうとしません。そのような世の中でも、私たちKaospilotは、企業が倒産する理由について多くの研究を行ってきました。現代において、「企業の失敗」の定義はさまざまで、多くの利益を得られなかったり、収益や成長率が業界平均に届かないだけでも、失敗と見られることもしばしばあります。ですが今回は、法人としての存在がなくなってしまうような、企業倒産の原因をそのプロセスとともに解説したいと思います。

企業の倒産にまつわる事実と偽り

企業にとって究極の失敗と言える倒産をテーマに、私たちKaospilotは62個の出版物や事例を元に研究を行いました。
1から説明していては皆さん退屈してしまうと思うので、大事な点だけをいくつかまとめてお伝えします。

まず第一に、企業の倒産が経営者の怠慢のせいであると言うのは作り話だと言うことがわかりました。
あなたがどれだけ倒産した競合企業にダメ出しをしたくなっても、「君たちは情熱が足りなかったんだ」とか「最善を尽くしてなかったんだ」と言った議論は、単純に間違っているのでやめておきましょう。
実際は、企業が倒産の危機にある時、経営者は他の組織の経営者よりも長時間、より懸命に仕事をしていることが研究から判明しました。
ではなぜ、企業は倒産するのでしょうか?

私たちの研究の2つ目の発見は、倒産の危機にある企業の経営者は、「間違ったこと」を懸命にしているということです。
アメリカの大手DVD・ビデオレンタルチェーンとして2000年代に市場を風靡していたブロックバスター社を例にとってみましょう。当社は、ネットフリックスをはじめとする配信サービスの誕生により、2013年に倒産に追い込まれました。
当社の最高責任者(CEO)であったジョン・アンティオコは、倒産した当時、行動力や問題解決能力に欠けていたとして倒産の責任を問われていました。
しかし、アンティオコは、自分や自分の部下の労働量は莫大なものであり、短期的な視野でしか状況を見ず、デジタル化事業への投資削減を要求してきた株主に倒産の原因があると主張しました。
確かに、彼の言い分は的確であるかもしれません。

「Active Inertia - 勝者の奢り」

アンティオコ元CEOの言い分は間違っていません。
ブロックバスター社をはじめとする多くの倒産企業は、”Active Inertia - 勝者の奢り”という現象に陥っています。端的に言えば、自滅という意味です。

そもそも、収益が0の状態からスタートするビジネスにおいて、破産するとは、逆にいえば一度は成功していたということです。成功企業の経営者は、自分の成功体験を元に市場のイメージを描きます。そして、作り上げたイメージを元に顧客を満足させたり、ユニークな価値を提供できるような次の戦略を練るのです。続いて、自分の商品やサービスに価値を生むために、技術や資産に投資を行います。そして、プロセスを目の当たりにした企業の社員たちの中で、ビジネスの成功モデルが組織風土として浸透し、人材育成が行われていくのです。

どのように失敗するのか?

市場、そして世界は常に変化をしています。私たちの研究の最大の発見は、多くの企業は市場・世界の変化に合わせて自分たちが持つ市場イメージを変えていくのではなく、そのイメージを不変の定義のように捉え、それに固執するということです。そして彼らは、そのイメージを疑うこともなくより頻繁に、繰り返し事業展開の際に当てはめていくのです。

例えば、新聞業界の中では「ミレニアム世代も歳を重ねれば田舎に住む裕福な高齢管理職のように、新聞を読むようになるだろう」という定説が長く言い伝えられていました。しかし残念なことに、現実は定説とは大きく異なるものでした。デンマークの一番規模が大きい新聞社の2020年の購入者の平均年齢は63歳です。2021年には64になるそうです。固定的な市場のイメージによって、業界が衰退の道を進んでいることは明らかですよね。しかしどういう訳か、若者がいつか新聞を読むようになるという定説は未だに疑いの目も向けられず、業界に深く根付いています。

そうするうちに、「これが定説であるから」という理由で慣行されていく企業の戦略は、ますます陳腐化が進み、顧客はさらに離れていきます。このように周りの状況に目を向けず、自分の定説に依存する内向きな姿勢は、顧客になんの価値も提供しない無意味なルーティーンを増やすだけでなく、コストもかさばります。にもかかわらず、企業は意地を張るように陳腐化したルーティーンを使い続けるのです。さらに、企業がこれまで投資してきた資本や技術はその価値を失い、経営のお荷物と化して行くのです。

例えば、あなたが配送サービスを作るために多数の倉庫や運送トラックを購入したとしましょう。しかしその投資はドローンが業界で運用されるようになったら、どれほどの価値を持つでしょうか?ほぼないに近いでしょう。そして企業倒産までのプロセスの最終段階かつ最悪な影響は、従業員が、企業の持続性に疑問を抱き、転職を考え始めたり、やる気を失ったりすることです。顧客と毎日交流し、企業の戦略が市場の需要と一致していないと最初に気づくのは、従業員なのだから。

やっとのことで自分の危機に気がついた企業は、定型通りに、コスト削減できるような取り組み、戦略を練り、コンサルタントを雇い、必死に抵抗しようとします。しかし、問題の本質に気がついていない企業は、砂地獄にはまった時のように、もがけばもがくほど、その状態は悪化していくのです。

今回は、企業がなぜ失敗してしまうのか、その原因とプロセスについてお伝えしました。
次回は、この内容を踏まえ、どうすれば失敗を防げるのかを解説します。

Thank you.
Christer

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