インターン生の道順さくらです!
今回は引き続き、センベイブラザーズ 笠原健徳さんインタビュー【後編】です!
パッケージの工夫やデザインの経緯、なかなか見ることのできない工場内について紹介していただきました!
前回の記事はこちら↓
イノベータージャパンOBインタビュー:センベイブラザーズ笠原さん【前編】
まず煎餅焼機ですね!
お煎餅の生地をここ並べて置いて、ベルトコンベアで火の上を通ります。
この機械を使っても焼ける量が限られてしまっていて、生産が間に合っていません。
焼く、味付けなど、煎餅自体の製造工程は弟がすべて1人で担っています。
ここは煎餅を乾燥する場所です。
これはソース味なんですが。
「あ!まだ少し水分がありますね!」
そうです。
煎餅の種類によって一晩くらい機械で乾燥して、翌日袋詰めして出荷されます。
ー工場で大変なことはなんですか?
やはり機械的な部分で窮地に立たされたことはありましたね。笑
例えばこの「味付け機」。焼かれた煎餅がそのままこの機械に流れていきます。
中にお醤油が入っていて、煎餅が樽の中で味付けされるのですが、何年か前に入れ替えをしたので、この機械だけ新しいです。
数年前のちょうど受注が増えてきた頃に、今まで使っていた「味付け機」が壊れてしまいました。
受注が増えている最中の大きなトラブル…。機械自体は数千万円の機械の為、買い替えは予算的に難しい。しかし、受注している生産量は手での味付けだと作れない。どうしたものかと悩んでいた時に、その前年に申請していた行政の助成金の事を思い出しました。
有り難く申請を採択して頂いた為、プランの一部変更の相談をさせて頂き、何とか新しい「味付け機」を購入する事ができて、ピンチを何とか乗り越える事が出来ました。ほんと行政の方に助けて頂き感謝です。
ー凄い…!でも助成金などもチェックしていたのですね!
そうそう!それもイノベーター・ジャパンで働いていたから知ることが出来た知識です。 当時、イノベーター・ジャパンで環境ビジネス系のサイトの運用もお手伝いさせてもらっていたので、その時に行政の助成金の存在を知り、今回の申請にも繋がりました。
ーパッケージデザインはどういうこだわりがありましたか?
実は、発案したのはイノベーター・ジャパンで働いていた頃の帰宅途中でした…!現在の表参道のオフィスからの帰り道、お腹が空いてしまって、煎餅を食べながら帰った事があるんですが、表参道の土地がら恥ずかしくて堂々と食べ歩けなかったんですね。そんなんで、表参道で食べ歩いても恥ずかしくないパッケージを作りたいと思い、NYのホットドックのような、煎餅を食べ歩いてもカッコいいスタイルを目指しました。
中身の煎餅についても僕らなりの工夫を行っています。
米菓業界では、割れてる煎餅はB級品として扱われ、正規品として販売せず、安価で販売する傾向があるのですが、僕らの商品は割れている煎餅も正規品として販売しています。理由はコスト削減です。
割れた煎餅を間引いてしまうと、商品単価が上がってしまう為、割れた煎餅も価格に含め、無駄なコストを発生させないようにしています。
あとはパッケージのロゴも最初はスタンプで押してました。
当時は印刷するお金がなく、スタンプが押せる素材を選びました!そんな限られた中で完成したのがこのパッケージです。
ーすごい。そんなに色々な要素があったんですね…
今ふと裏を見たら「チョレギ味」と書いてあるのですが!笑
これはチョレギサラダの味を煎餅に落とし込んだのですが、一時期、兄弟でチョレギサラダにはまってまして、そこからインスピレーションをうけた煎餅です。笑
市場調査とかではなく、自分たちの日々の生活の中で感じたおいしい食べ物からヒントを得て煎餅の新たな味に繋げていってます。
あとはこのボトルの商品、「センベイカーニバル」も「勿体無い」が起源です。
先程お話した割れた煎餅の二次活用です。
割れた煎餅の中でも、割れすぎた細かい煎餅は袋の商品には適していな為、正規品から除外していたのですが、生産量が増えてくるとその除外品も増えてきて、勿体無いなと。そこで数種類の味をアソートで混ぜてボトルに入れて商品化しました。
色んな味が入っていて、食べた時に口の中が賑やかになるので「センベイカーニバル(祭り)」というネーミングにして笑。
このように全体的に商品の発想は「勿体無い」とか、課題解決の為に生まれる事も僕らの環境ならではの起源となってます。
ーそうですよね…私も割れているお煎餅とかはあまり気にしていなかったです…。
そうそう、ポテトチップスだって意外と割れているし、それってただの「業界の常識」や「習慣」なんですよね。
ー煎餅ブラザーズのロゴはどのような意味がありますか?
この「笠」に稲穂がついたマークが先代のおじいちゃんが作ったマークで、僕らはこの稲穂を受け継ぎました。
これは継承してきたものとして大切にしたいです。
ー「センベイブラザーズ」はブランド名ですよね?
そうです。「笠原製菓」はもともと「受注生産(OEM)」をずっとやってきた為、受け身での業務が多く、主体的に動けていないかった為、主体的に動いて売上を作れるように立ち上げたのが、当社初の小売ブランド「センベイブラザーズ」です。
今も「受注生産(OEM)」もやらせて頂きながら「小売(センベイブラザーズ)」をやっています。それは、先代からの付き合い・恩恵もありますし、今までOEMをやってきたからこそ「センベイブラザーズ」で20種類以上の味を展開できている。
その「受注生産(OEM)」と「小売(センベイブラザーズ)」の強みを生かしたハイブリッドの強みを僕らの工場の強みとして育てられればと思っています。
ー本を執筆した経緯を伺ってもいいですか?
本は2018年の5月に出版しました。
ーお二人で書かれたんですか?
いや、基本僕が書きました。笑
僕らセンベイブラザーズが現在に至るまでの軌跡と、それ以前の家業の成り立ちを初代の祖父の時代にまでさかのぼり記させていただきました。
「試練」という章で始まり、ブラザーズのその後の成長について…その時メディアに取り上げられたり、大きなクライアントがついたことなどその時の自分たちの思いを語らせていただきました。
この本は、僕らと同じような町工場で、2代目3代目でなんとか切り盛りしようとしている方々に、僕らの実体験から何らかの現状打破のヒントを得てもらえたらいいなと思い、出版に致りました。
印刷データの作成や紙選びまで、全てやったので結構大変でしたね…いい勉強になりました。
自分がDTPを経験していたので出版できたこともあり、「繋がり」を感じました。
雑誌、テレビ、ラジオ、なのでも沢山取り上げられましたが、本を出版したことにより、今までに無かった「ご縁」ができて、現在は講演などにも行かせていただいています。
実はこの本の出版自体も、お煎餅が繋いでくれた「ご縁」で、たまたまお客さんに出版社の方がいらっしゃって、その方が僕たちに興味を持って声をかけてくれました。
自分達の書籍を発行できるなんて夢にも思っていなかったので、とても貴重な経験をさせて頂きました。書籍をキッカケに新たな出会いもたくさんあり今に繋がってまして。とても有り難い限りです。
ーこれから「センベイブラザーズ」としてやっていきたいことはありますか?
大きな夢や野望はないです。
僕らは潰れかけたところから始まっていて、現状このようにやり続けられていることが嬉しくて、それがこれからもやり続けたいことなんです。
なので「続ける」ということと、あとは「食べたい」と言ってくれる方が増えていて、その方々が「食べたい」というときに食べられる「安定供給できるシステム」を築きつつ、色々な味に挑戦し、お客さんに新たなワクワクを提供し「笑顔」にしたいです。
「継続」自体も大変で、初めから「僕らが出来ることを全力でやる。」という精神でやってきたので、あまり背伸びしすぎず、自分たちが出来るところまでやっていきたいです。
インタビューを終えて
笠原健徳さんありがとうございました…!
「センベイブラザーズ」の秘話だけではなく、「センベイデザイナー」としての笠原さんの思いを聴くことができました。
また、イノベーター・ジャパンで働いていた時のことも現在に結びつけて語っていただき、笠原さんの中で「繋がり」をとても大切にしていることが伺えました!
現在は人気すぎてなかなか手に入れれませんが、工場直売を実施するときなどは是非購入しに行きたいです!!笑
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