こんにちは、コミュニケーションマネージャーの高尾です。
今回は、2021年6月4日の「第3回アドテク勉強会」について、イベントレポートします!
テーマは「プライバシー保護とクッキー・IDFAについて」。
気にはなっていたけど詳しくは調べる時間もないし…なかなか体系的に学ぶ機会の少ない、ちょっとニッチな(だけどマーケターにとっては超重要な!)テーマに迫っていきます!
【おさらい】アドテク勉強会とは何か
今回開催したアドテク勉強会は、Webマーケ支援や位置情報DSPを展開する弊社有志のメンバーで企画したものです。
実は私達はBlisという位置情報DSPのサービスを日本で展開していこうとしているのですが、まずは私達がアドテクに詳しくなっていきたい!もっとアドテクの認知度を広めていきたい!という想いがあり、今回開催の運びになりました。
そんな #IJ_adtech ことアドテク勉強会ですが、ゆるく学び合うコミュニティとして以下のように呼びかけたところ、16名もの方々にご参加の要望をいただきました!
https://twitter.com/arisa_takao/status/1386454473481101314
開催会場
今回も、九州から東京まで幅広くご参加いただいたので、オンライン・オフラインでの同時開催となりました(が、当日は雨だったこともあり、今回はゲストは全員オンライン、運営がオンライン・オフライン参加という形式になりました。)。
オフラインでは、弊社、株式会社イノベーター・ジャパンの東京オフィスにお越しいただきました。
第3回のテーマは「プライバシー保護とクッキー・IDFAについて」
今日は「昨今のプライバシー情報の扱いやそれに対する眼差し、仕組みの変化を学び、
今後の広告の潮流を理解すること」をゴールとし、それぞれの概念について、定義や関係性を学びました。
アジェンダは以下の通り。
- プライバシー保護に関する歴史
- GDPR、CCPAって何?
- (Google)クッキーとIDFAについて
- そもそもファーストパーティクッキーとかサードパーティクッキーって何?
- (Apple)IDFAの利用制限
- 今後の広告に求められることって何?
上記に沿って、過去から未来まで幅広く話を展開していきました。
本記事では「今後の広告のあり方」について、見ていきましょう。
今後の広告はどうなるの?
ここまで見てきた通り、
- 個人情報を厳密に守ることが求められている
- それに呼応する形で、GoogleもAppleも個人情報を守る動きを取る
というなかで、現存するあらゆるものの在り方を考え直す必要があります。
①アドテク業界
アドテク業界がなくなってしまうということはありません。なぜなら、「プライバシーサンドボックス」により、新しいターゲティングの仕様は何らかの形で維持されるからです。
ただし、それがサードパーティベンダーが取り入れることができるものになる保証は、今のところなく、また、対応に時間もかかると言われています。配信面と商材のコンテクストを用いたターゲティングが今のところ約束されている1つの答えと言えそうです。
なので、アドテク企業にとって、焦点は収益への影響をいかにして最小化するかが重要そうです。例えば、サードパーティのデータトラストや、消費者の嗜好を収集する合法的な手段など、Cookieに代わるものを考える必要があるのではないでしょうか。
②広告主側のマーケター
一部のリターゲティングやデモグラの判別などができなくなることによって、広告のターゲティング精度が下がり、キャンペーンの投資対効果が下がってしまう可能性があります。
そのため、自社メディア上の行動をベースにターゲティング精度を維持できるGoogleやFacebookへの投資割合がさらに高まりそうです。
また、今後は「顧客の購買履歴(CRMやLTV)」といった、顧客のデータ活用についても同意を得た上での「より骨太でより深い」一連の顧客行動に対するマーケティング投資の最適化の比重がより高まるのではないでしょうか。
逆に言えば、すべての個人データ活用に「顧客の同意」が必須となるのですから、これまで「同意を得た上でデータ提供」される市場として発達してきたアンケート・モニタ型のサービスや市場との連携も、今後より高まるのではないかとも言われています。
③メディア
「メディアの広告モデル」はインターネットのエコシステムの生命線といえるため、この形態は維持されると考えられます。その一方で、その効率性については、ターゲティングとトラッキングの精度が一定の割合で下がることを考えると、企業の広告投資に対して影響があるのは避けられません。
④プラットフォーマー
GAFAといった圧倒的なファーストパーティデータを持つプラットフォーマーは、このままだと今後より力を持つこととなるでしょう。また逆説的に彼らにとっては、力を持ちすぎることで独占禁止法の指摘を受けることのないよう、競争市場の中の一企業の立ち位置とプラットフォーマーとしての公共性をどう維持していくのかが議論の的となりそうです。
Apple、Googleとも従来の追跡型に代わる手法の導入を表明しており、特にGoogleは、人工知能(AI)を使って利用者をグループ分けし、個人を追跡しないかたちで嗜好に合致した広告を打てるようにするとしています。
代替する技術は?
さまざまな技術が登場することが予想されています。代表的なものをいくつかピックアップします。
①サードパーティークッキー代替プラン
ユーザーのトラッキング手段として「デバイスフィンガープリンティング」と呼ばれる追跡技術を利用する例が増えてきています。
デバイスフィンガープリンティングとは、OSの種類やWebブラウザの種類、バージョン、IPアドレスなど、ユーザーがサイト閲覧に用いているデバイスに関する情報からユーザーを特定する方法のことです。WebブラウザがWebサイトにアクセスする際に送られる情報であり、多くの場合、頻繁に変更されるものではない。そのため、これらの情報からデバイスの同一性を推定し、ユーザーを追跡することができます。
②FLoC
Googleが提案した、プライバシーを保護しながら、ユーザーが興味を持つ広告を配信できるソリューションとして「Privacy Sandbox」と呼ぶ仕組みがあります(ブラウザ提供者だけが使える抜け道みたいなもの)。その「Privacy Sandbox」を実現する技術として「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」を提唱し、業界標準にすべく試験運用を行っているさなかなのです。
ざっくりとその特長をお伝えすると、
- ユーザーを嗜好で分類(グルーピング)するよ
- それぞれのグループにはIDを付けるよ
- 広告会社にはそのグループIDだけを渡すよ
といったものです。
メリットは、個々の閲覧履歴などが広告配信元などと直接共有されることがないため、サードパーティークッキーよりも、プライバシーが守られるということです。
ただし、「ログインしなくても嗜好が把握されてしまう」ことが問題と考えられている面もあります。検索語句で嗜好は簡単にわかってしまいますよね…
③ IDプロバイダー
GoogleやAmazon.com、Facebook、Apple、Netflixといった、「ウォールドガーデン」と呼ばれる自社サービスへの囲い込み施策を取る巨大IT企業に対抗する、サードパーティーcookieなしでオンラインユーザーを特定できるIDを提供しているIDプロバイダーが少数ながら存在しています。
仕組みとしては、ユーザーがWebサイトを訪問し、その運営者に自分の情報の使用を許可すると、運営者はそのユーザーの許可を提携先のIDプロバイダーと共有する。これによりIDプロバイダーはそのユーザーのIDを作成し、Webサイト運営者はターゲティング広告の配信にそのIDを使用でき、デバイスやマーケティング支援システムで使われる多様なIDを正確にひも付けることで、企業の顧客理解を深めることが可能になる…というものです。
これにより企業はIDの行動履歴や属性にマッチした広告を購入し、パーソナライズされたマーケティング戦略を推進できるようになります。
④ファーストパーティーデータ
企業はたとえサードパーティーcookieを利用できなくなっても、引き続きファーストパーティーデータは広告に利用できます。
ファーストパーティーデータには、企業が独自に集めた氏名、住所、電話番号など、個人を特定可能なあらゆる情報が含まれ、これらのファーストパーティーデータを着々と収集してきた企業は、GoogleがWebブラウザ「Chrome」におけるサードパーティーcookieを段階的に廃止しても、支障はなさそうです。
⑤同意管理プラットフォーム(CMP)
CMP(Consent Management Platform/同意管理プラットフォーム)とは、訪問者の利用目的ごとにユーザー本人の同意を取得・管理することができるツールのことで、外資企業を中心に導入が進んでいるそうです。以下の2つの機能を持つことが特長です。
- Webサイトやアプリ訪問者に対して同意を取得する機能
- 訪問者ごとの同意取得状況を自社で管理する機能
⑥コンテキスト広告
Webページのキーワード、文意、画像などをAI(人工知能)が自動で解析し、文脈に合った広告を配信する手法のことを指します。属性に紐づくものではなく、状況に紐づく、コンテンツの文脈に沿ったキーワードでターゲティングを行うことです。
ちなみに、似たような広告ターゲティング手法としては、
- WebサイトやWebページをカテゴライズして広告配信を行う「コンテンツターゲティング」
- Webページ内に含まれるキーワードを指定して広告配信を行う「キーワードターゲティング」
がありますが、上記の2つと違い、コンテキスト広告は文脈や画像をAIで解析し配信対象を決定するところがポイントです。
ちなみに、コンテキスト広告を提供する企業として、2008年に設立されたアメリカのGumGumが有名。他にも、Integral Ad Science社のADmantXや、スリーアイズ社のCandyなどが知られています。
⑦位置情報広告
ジオグラフィック(ロケーション)ターゲティングと言われる手法のことです。弊社プロダクトであるBlisもこれに該当します。スマートフォンで取得した位置情報データからターゲットを定め、そのターゲットに対してWEB広告を配信できるサービスのことを指します。
GPS、Bluetooth、Wi-Fiなどによって位置情報を取得し、特定のエリア内で興味関心があると想定されるターゲットへの認知につなげる、というものです。
このメリットは
- 広告を見た人が来店したかどうかが分かる
- コストを抑えた効率的な配信が可能
- 地域密着型の店舗集客に利用できる可能性がある
- 潜在顧客を顕在化できる
- 配信結果から、より最適な配信を分析・改善できる
などがあります。ただし、
- 申し込みや購入を目的とした広告ではない
- 配信結果の分析は難しい
といったデメリットもあります。
おまけ:今後の広告のあり方ってどうなるんだろう?
最後はフリータイムでいろいろな質疑応答や最新のマーケ情報などが飛び出しました。
■データについて
- データについては自社で取るか、提携するかの方向づけがまず必要そう
- データが取れる人の量を増やすのが肝になりそう
■マーケの方法論について
- 口コミが大事になりそう
- アフィリエイトは今後ますます苦しくなりそう
■大事にするべきこと
- 定量的な数字以上に、消費者感情を大事にする方向性=誠実さ、体験重視
■ユーザリテラシ
- とはいえ広告を出しにくくなるとしても、無料でコンテンツを使う以上、広告がついてくるのはしょうがない、というのは了承してほしいとは思ってしまうよね。。。
- 今後はYou Tubeとかみたいに、広告を見たくないからお金を払うみたいなのもあるのかもしれない
- では広告ってそもそも必要なのか?最適化が最適解なのか?
■未来の広告のあり方
- バナーもユーザと媒体で最適化できれば良いのでは。広告主は許諾する人が多くなるような努力をする必要
- 例えば、ユーザ自身に出る広告を選ばせるようにするとか?
- テクノロジーだけだと実現できないものもある
- 例えば、メディアは広告で稼ぐのではなく、タイアップに磨きをかけていくべきなのでは
- いい体験作りが重要になりそう(例えばLIGの広告は、読んでも嫌な気持ちにならない)
などの意見が出ました。縦横無尽なマーケ議論、今後も楽しみです🌸
次回予告
次回は以下のテーマ・日程で実施します(明日ですが…!)。
テーマ:運用最適化・広告の集計方法自動化の最適解とは
日程:6/18(金)19時〜21時
場所:オンライン&オフライン
参加表明はこちらからDMにてお願いします!
https://twitter.com/arisa_takao
メンバーを募集しています!
上記のように、マーケティングやアドテクなどの領域について、
特に一人で学びきれない体系だった部分や最新情報についてまで、
ともに学び、キャッチアップしていきたいメンバーを募集しています。
参加だけでも、運営に関わってくださってもOK!
興味のある方は是非ご連絡ください。
連絡先はこちら↓
https://twitter.com/arisa_takao
弊社お問合せフォームでもOKです!↓
https://www.innovator.jp.net/contact/
それでは、第4回イベントもお楽しみに!