2022年3月16日、Google社より、2014年から提供されていたユニバーサルアナリティクス(Google Analytics 第3世代)の計測終了のアナウンスがあり、Googleアナリティクス4への移行が決まりました。
※今回の記事は前提として、企業におけるユニバーサルアナリティクスの活用度合いによって対応が変わります。現在ユニバーサルアナリティクスを使っていない場合には、以下は必要度が低い内容となります。
ユニバーサルアナリティクスを導入している企業のマーケティング担当者は、GA4の移行対応に大忙しかもしれません。
では、あなたの会社は、このニュースがビジネス上でどういったインパクトがあるのか、きちんと理解して取り組めているでしょうか?
「マーケティング担当は何を騒いでいるの?」と疑問に思っている方も、すでに危機感をもって対応を前倒しで進めている方もいると思います。
今回の記事は
- GA4で何が変わり
- Googleが何をねらっているか
- ビジネス視点では何を考慮すべきか
を中心に、把握しておくべきことを解説したいと思います。
Google Analyticsの変遷について
本題に入る前に、Google Analyticsの変遷について簡単に解説します。
- 第1世代 Urchin (2005年〜2012年)
- 第2世代 グーグルアナリティクス (2007年〜2016年)
- 第3世代 ユニバーサルアナリティクス (2014年〜2023年)
- 第4世代 Googleアナリティクス4 (2020年10月〜)
2005年にUrchinをGoogleが買収してから、現在までバージョンを何度か変える形で進化してきました。
今回、話の焦点になっているのは、第3世代 ユニバーサルアナリティクスが終了し、第4世代 Googleアナリティクス4に切り替わるという話です。
Googleアナリティクス4で何がかわるか?
ユニバーサルアナリティクスとGoogleアナリティクス4は、端的に言うと「まったく別物のシステム」です。
まず、指標の定義が大きく変化し、データも相互に連携していません。
そして、ウェブサイトとアプリを横断して計測が可能になり、また、Googleが提供しているデータツール BigQuery(ビッグデータを解析できるサービス)も無償版での利用が可能になりました。
・ユニバーサルアナリティクス→ページビュー単位の計測
・Googleアナリティクス4→イベント(※1)単位での計測
このように、集計方法を変えることで、いままでのユニバーサルアナリティクスと比較してユーザー行動のデータが正確に取得できるようになったのが特徴です。
※1 イベントとは: ページ遷移を伴わないアクション。ユーザーがある行動(外部リンクのクリックやファイルのダウンロード)をおこした時に「イベント」としてトラッキングする。
ユニバーサルアナリティクスからGoogleアナリティクス4へ急速に切り替えたワケ
実はわたし自身、ユニバーサルアナリティクスの廃止については、いつかは来るとは思っていましたが、ここまで早く発表されるとは思っていませんでした。
前段で説明した通り、ユニバーサルアナリティクスとGoogleアナリティクス4はまったく別の設計思想で作られたプロダクトです。この2つのプロダクトではデータを共有しておらず、それぞれ別にデータを貯めています。
それゆえに、ユニバーサルアナリティクスとGoogleアナリティクス4で2倍のデータ量をサーバーに抱えることになり、単純計算だと運用コストも2倍になるわけで、コスト的な部分において区切りをつけたかったのでしょう。
なぜ、Googleアナリティクス4を開発する必要があったのか?
わたしは主に、2つの理由があると考えています。
(1)従来のユニバーサルアナリティクスではデータの集計が正しく把握できなくなっている
Google Analyticsは、時代の移り変わりによって変化しています。
もともとは1台のPCでウェブサイトを閲覧することを想定していた時代から、PCやスマホなど複数のデバイスを横断し、さらにブラウザや専用アプリなど複数の環境から見る、といった形でユーザー行動が変わりました。
そのため、ウェブ解析をしなければならないシーンも、時代とともに変わってきたのです。
(2)GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)の影響でデータ保持方法について変革を迫られている
クッキーを利用したデータ収集にも制限がかかるようになり、Googleとしても、GDPRにあわせた形でユニバーサルアナリティクス自体を変革する必要がありました。
このような規制をふまえて、集計データについても、クッキーの保持期限やデータ削除などを配慮する必要が出てきました。
データの集計がやりづらくなると、なぜGoogleは困るのか?
最も大きな理由は、Googleが提供する広告サービスの成果計測が正しく集計できなくなるからです。
もともと、Googleがurchinを買収してグーグルアナリティクスとして提供したのは、広告ビジネスとして始めたGoogle広告(旧:Google アドワーズ広告)の成果計測を正しく行うことで、クライアントの効果に対する信頼感を高めるためでした。
Google Analyticsの提供により、Google広告は飛躍的に売上を伸ばし、一説では、30億ドルを稼ぎ出す事に貢献したと言われています(※2)。Google Analyticsで正しい計測を行えるということは、彼らが提供する広告ビジネスの生命線でもある訳です。
Google AnalyticsのプロダクトマネージャーであるVidhya Srinivasan氏は、クッキーで数値が取得しづらい状況を考慮して、機械学習を利用した数値計測を今後の開発項目に入れることを明言しています(※3)。
※2 参考: グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ スティーブン・レヴィ (著)/CCCメディアハウス)
※3 参考:TechCrunch (Google Analytics prepares for life after cookies)
ビジネス視点では何を考慮すべきか
ビジネス視点で、大きく関わってくるものとしては2点あります。
KGI・KPI指標に関わる部分と、移行コストです。
(1)会社全体のみるべきKGI・KPI指標がかわる
いままで取得していたKGI、KPI指標も、Googleアナリティクス4によって集計ロジックが変わるため
- 取得できないデータがある
- 同じ指標で大きな誤差が出る
といった問題が起こりえます。
たとえば、セッション数については、同一ユーザーのカウントが以前と比較して低下します。KGI、KPI指標は企業の目標管理制度と結びついているケースが多いので、この数値の影響には注意が必要です。
また、企業内部の話だけでなく、対外的に発表している資料でユニバーサルアナリティクスの数値を利用している場合にも対応が必要となります。代表的な例としては、メディア企業の広告媒体資料でPVやセッションが明記されているケース。
対外的にユニバーサルアナリティクスのレポートを納品している場合、あらかじめ担当者とコミュニケーションが必要となるでしょう。
あまり見かけることは少ないですが、IR資料でユニバーサルアナリティクスの数値を記載している場合も、対応が求められます。
上記をふまえて、現在、社内及び社外でどのような数値を利用しているか整理が必要となります。
- 利用しているユニバーサルアナリティクスの数値はなにか?
- どのような利用用途で使用しているか
- Googleアナリティクス4で数値取得できるか?
- Googleアナリティクス4で数値取得した場合、ユニバーサルアナリティクスと比較して、どれくらいの数値乖離が発生するか?
- ユニバーサルアナリティクスの数値でサードバーティのツールと連携しているものはなにか、Googleアナリティクス4と適切に連携できるか
といった項目を、サイトごとに列挙して確認していくとよいでしょう。
また、その数値取得が本当に必要なものなのか、これを機会に議論してもよいかもしれません。
(2)移行コストが発生する
ユニバーサルアナリティクスからGoogleアナリティクス4に移行するにあたって、移行コストがかかる訳ですが、大きく3つのコストがかかると考えています。
A:コミュニケーションコスト
ユニバーサルアナリティクスで取得している数値について、変更が入ることを経営層を含む関係者と事前に調整していく必要があります。
調整を行った上で、先ほど述べたKGI、KPIに関わる部分の指標を企業としてどのように取得していくか計画していく必要があります。
B:学習コスト
そもそもGoogleアナリティクス4がどのようなツールなのか、前持った学習が企業内で必要となります。
何ができて、何ができないのか、それを知らないままに計画を立ててしまうと、計画の出戻りなどの無駄なコストが発生する原因となってしまいます。
また、Googleアナリティクス4は発展途上のツールで、機能の改修が定期的におこなわれているので、新情報のキャッチアップも必要です。
C:実装コスト
移行にあたって、設定画面上で終了するもの、内容によってはシステム開発をする必要があるものなど、見極めた上で、設定を行っていく必要があります。
社内で保有しているWebサービスの数が多いほどコストがかかります。
以上、A,B,Cのコストを踏まえた上で、社内で対応できるか、社外のパートナーと連携して動いていくのか、見極めが必要となります。
移行スケジュールに関する注意点
Googleアナリティクス4は初期設定完了後からデータが記録されるようになるため、早めの対応が望ましいと考えています。2023年7月にユニバーサルアナリティクスの計測が停止されることを考えると、できれば、2022年7月までに対応することをおすすめします。
早めにGoogleアナリティクス4の対応を行い、ユニバーサルアナリティクスとGoogleアナリティクス4の並行利用を1年間実施することで、数値の乖離について計測する期間を確保できるためです。
さいごに
Googleアナリティクス4は2022年現在、まだまだ発展途上のツールですが、個人的には今後の機能開発を楽しみにしています。
Googleは広告ビジネスのために計測ツールであるGoogleアナリティクス4の精度を高めると書きましたが、Google Analyticsが社会的に普及した今、インフラとして整備していくという社会的な使命感もあるのではないかと思っています。
手前味噌ですが、弊社のメディアコンサルタントのセミナー「GoogleAnalyticsサービス終了! GA4への乗り換えどうする? メディアコンサルタントが全て教えます!」を2022年6月2日に開催する予定です。
実際にGoogle Analyticsを利用するマーケティング担当者だけではなく、現場の状況を把握しておきたい経営管理者の方のご参加も歓迎しております。無料開催ですので、ぜひお申込みください。
追記
イノベーター・ジャパンでは、「困っていることがあるけど、問い合わせや見積もりを依頼できる程まとまっていない…」という方のために無料個別相談会を実施しています。GA4の導入・設定に関しても、弊社のメディアコンサルタントが、お客様の状況に応じて最適な導入・移行プランをご提案いたします。
もしなにかお困りのことがありましたら、お気軽にお申し込みください。