イノベーター・ジャパンは昨年末、「今後3年間でメディアDX(デジタル・トランスフォーメーション)集団に進化する」という戦略を掲げました。DXといっても対象となるフィールドは幅広いのですが、IJは特に出版・雑誌業界のDXコンサルティングを強みにすべく、新しい体制で動き始めています。
もともとマーケティング・デザイン・テクノロジーの力を生かした「ビジネスデザインカンパニー」である当社が今回この戦略を決めるに至った思いや、出版業界やデジタル変革への課題意識、今後求められるマインドセットについて代表の渡辺と話しました!
「DX集団への進化」に向けた課題の変遷とは?
――イノベーター・ジャパンは創業以来一貫して、出版・雑誌業界を顧客として顧客ビジネスのDXに取り組んでいます。昨年改めて「DX集団への進化」というキーワードが出ましたが、社内での課題感はどう変わってきたのでしょうか。
振り返ってみると、3つのフェーズに分かれます。第一は顧客メディアが紙ベースで、オンライン化されてもいなかった創業時、ゼロイチのフェーズ。この時は全て私が案件に関わっていたんですが、まずは顧客が発行している紙ベースの雑誌をオンライン化することがゴールで、まだ細かい課題はあまりなかったような時期でした。
次にデジタルならではのビジネスモデル構築へ向けて、体制を整備した第二のフェーズ。今では当然になりましたが、Webサイトを構築するだけでは顧客のデジタルビジネスを成長させることはできません。メディアグロース施策の提案や、記事配信などの業務フローを整備してメディア運用支援を開始しました。
――現在プロジェクトチーム制でメディアオペレーションの最適化をしている&donutsの立ち上げもこの時期でしたね。
最近ではメディア運用支援のフローが安定してきたので、ビジネスモデルも次の段階へと進化するフェーズに入ってきました。これはうちだけではなくて、顧客側の要因もあります。メディアのオンライン化が当然になり、顧客の事業環境も競争的になっています。
――広告収入の次に来るビジネスが必要ですね。
現状の課題は、顧客のビジネスフローに入り込んだ高付加価値のDXを提案し、いかに一緒に事業の未来像を描いていくかということ。その意味でこのタイミングで「メディアDX集団への進化」を掲げました。運用というサービスの土台は作れたので、次のステップでは10年間の業界での経験が活きてくると思っていますね。
――組織面の課題はどうでしょうか。
よく既存事業を「田んぼ」に例えているのですが。現在は次のビジネスチャンスを開拓しにいく「狩猟」の時期だと思ってます。まだまだ事業としてもストレッチする部分が多いので、何か変化したい、リスクを取ってでも挑戦したい人というと是非一緒にやっていきたいですね。「狩猟脳」というか、使う頭も変わってきています。
デジタライゼーションがひらく、業界専門誌出版の新しい可能性
――出版・雑誌業界にどんな付加価値を提供したいと考えていますか?
本来メディアのコアとなる存在意義は「情報を編集して社会に届ける」こと。デジタル時代においては求められる手法も変わってくるけど、まだ時代に即した形に変化できていないと感じています。
例えば当社が提供しているCMSパッケージプロダクト「Open Media Suite」(写真:以下OMS)は初期仮説として、出版・雑誌業界の中でも業界専門誌を主要顧客としています。ここはデジタル変革の課題をまだまだ多く抱えた分野です。ここでいうデジタル変革とは、単に紙媒体で提供されているコンテンツをWeb化する「デジタイゼーション」ではなく、ビジネスのあり方そのものを変える「デジタライゼーション」。
デジタイゼーションの代表的なビジネスモデルはWeb化によるオンライン広告収入ですが、デジタライゼーションの狙いはもっと幅広いものです。
例えば業界専門誌のDX課題を、単にWeb化と捉えればビジネスの幅は限られますが、紙面を中心とした業界人のコミュニティ活性化と考えたらどうでしょうか。そこには知見を持った編集者・ライターがおり、専門的なユーザーへの物販が存在する。これをオンラインにすれば別々の事業の集合体として展開していけるわけですね。こういう専門誌をいくつかまとめてアドネットワークのようにしたり、オウンドメディア立ち上げの支援をする可能性もあります。将来的な構想にはなりますが。
OMSは単体でもメディア運用フローを改善できますが、本来こういったデジタライゼーションの事業構想と一体になったプロダクトです。そこで、OMSは「MEDIA DX for PUBLISHERS」というワンストップソリューションのコアシステムとして展開していきます。業界誌出版は本来業界の未来を語ることがミッションのはずなので、顧客と同じ視座でビジネスを語れるようにしていきたいですよね。
顧客、自社ともに「狩猟脳」で楽しみながら変革を
――DXの視座を持つするにあたり、組織も変わらないといけないという話はよく出ますよね。
「狩猟脳」は持っていきたいですよね。現在の事業基盤から、次のビジネスやプロダクトを展開していくフェーズにきている。そのためには、自律的に自分のいまいるネットワークや役割の枠外にはみ出して、知見を広めたり、楽しんだりすることが大事と思っています。旅行に例えれば、決まった目的地に行って終わりではなく、寄り道や道のりにも何か面白いことがあるんじゃないかと思う、そんな感性でしょうか。
ネットワークの外に出れば、自分が持っていたブランドや成功体験は通用しません。自分の力、自分の言葉で自分の付加価値を定義していくことが必要だと思います。大変かもしれませんが、事業は本来新陳代謝があるべきもの。前向きに変革のgrooveを発揮していきたいですね。