HOME Design 言葉が作る、デザインとクリエイション - 目的地へと向かうための視座とその源泉-

言葉が作る、デザインとクリエイション - 目的地へと向かうための視座とその源泉-

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安藤瑞基

デザイナーの安藤です。

今回は来月から、株式会社宣伝会議主催のコピーライター養成講座に通うことを決めた私がなぜ、デザイナーである身で言葉と向き合うことを決めたのか、デザインやクリエイションと言葉の関連性って何か少しお話できればと思います。

そもそも、言葉について考えたことはありますか?

まずは皆さんに質問です。
毎日生活をするなかで「言葉」について考えたことはありますか?

例えば、
朝電車に揺られている時、いつも励まされるあのお気に入りの曲の「言葉」
携帯で、なんとなく眺めている、誰が書いたか気にも止めないTwitterの「言葉」
さっきまで営業資料を作るためにパソコンでカタカタ打っていたその「言葉」
あなたのお気に入りの服、そのブランドのコンセプトとなる「言葉」
など...

多くの言葉は誰かによって考えられ、発信し自分たちの横を知らず知らずのうちに通り過ぎていく
そして、いつの間にか入ってきて自分の体の一部となっている

言葉が身近にあることが当たり前すぎて、実はなにを伝えたくてその言葉を選んだのかということについて、深く考がえる機会はなかなかないのかもしれません。

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言葉とデザイナーの関係性

「言葉に向き合ったことなんてない。」
「生まれた時から聞いて、話して使い続けてきたんだから。」
「いちいち言葉に向き合うことなんて普通しないだろ。」

確かに、わざわざそんな「当たり前」の存在に向き合うことなんてないですよね。これまでは僕も、文字や言葉を見ているだけで眠たくなってしまい、向き合う機会を作ることはありませんでした。

「デザイナーってカッコイイビジュアルを作って、イカしたWEBサイト作ってってやれればいいんでしょ?言葉なんて必要ないじゃん。」そんな風に考えている方もいるのではないでしょうか。


実は、僕もそんなふうに考えていた人の一人でした。
そして、デザイナーとして求められている「かっこいいビジュアルを作る力」には、「課題を可視化し解決する能力」が必要不可欠であることを、社会に入って一年弱、痛いほど身に染みて実感している、新人デザイナーの一人です。

この「課題を可視化し解決する能力」を身につける土台として、「言葉」が必要となってくると、私は考えています。

そのひとつの例として、デザインをする、またはビジュアルを作っていく際に、クライアントの持つイメージが抽象的である、もしくは、やりたいことと解決したい目的とが異なる場合があります。

クライアントが発した言葉そのままのものを作成したはずが、提出した際「これじゃないんだよね。」となってしまう経験、デザイナーなら一度や二度は経験をしたことがあるのではないでしょうか。

ここで重要なのは、クライアントが発している言葉は必ずしもデザインをしていく上での目的地ではない、ということです。

字面通りに受け取るのではなく、「もっと良い表現があるのではないか?」という視座を持つことがとても重要です。

例えば、「空気が綺麗で、景色のいい場所で朝コーヒーを飲みたいんだよね。どこかいい場所ない?」と言われたとしましょう。それに対して、「登山がしたいのかな」と考えて、軽くハイキングができそうな場所、山登りができる場所と少し気を聞かせて山の上にある雰囲気の良い喫茶店をお勧めしてみたとする。

すると、「いや、そうじゃなくて海辺で早朝散歩をしながらコーヒーをテイクアウトして飲みたかったんだよね。笑」と少し苦笑されてしまいました。これは極端な例かもしれませんが、実はデザインの現場でも同じことが起きていると思います。


「目的地を疑う、しっかりと言葉にして共通認識を持つこと」、これは当たり前のようで、なかなか難しいことです。いまはまだないものを言葉にして共通認識を持つことがデザインをしていく上でもとても重要なものになります。
自分が理解したものを相手に伝えてそのイメージをしっかりと共有する。そのために、「言葉にすること」が必要なのだと思います。


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デザインに言葉が必要な、もう一つ理由。


言葉を用いて課題を解決するためには、「可視化して方法や方向を考え行動する」ことだけではなく、もう一つ重要な点が存在すると考えています。

それは、「動きたくなる衝動を作る」こと。
これが、目的地へと向かうための視座や解決策と合わせて大切になる、重要なポイントだと考えています。

課題を解決するうえで、一人で解決できる場合もあれば、一人では解決できず多くの方の知恵と力とやる気を借りなければならない場面も多く存在します。

力を借りたい相手は、自分の会社の仲間やその周りに集まるステークホルダーだけではなく、これから仲間になるかもしれない誰かも巻き込んでいかなければならないときがあります。

熱量も目的もバラバラな人々を巻き込み、課題を解決していくために、私は「動きたくなる衝動を作る」ことや、それらの軸となる言葉が必要だと考えます。それらを言葉にするためには、自分がその物事だけではなく、その裏にある感情や衝動をしっかりと理解して、伝える能力が必要です。社会で言われている、「タグライン」であったり「ステートメント」と呼ばれるものがまさしくこの言葉に当てはまってくるものだと思います。

それらの、言葉を用い人々を鼓舞し、まとめ、デザインを課題解決のために前へと進めることが、僕が考えるデザインに言葉が必要な理由です。

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言葉がデザインとクリエイションの進むべき方向、そしてその目的地へと向かうための源泉になる。


「目的地への視座を決める言葉。」
「目的地へ向かうための原動力の源泉となる言葉。」


これら二つの言葉がデザインを課題解決の目的地へと進ませる。
言葉を磨き、その上でデザインをさらに前へ進める。
そんな力を身につけてきたいと思います。

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