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CEOが語る、デンマークオフィスとデザイン思考の未来 ②

こんにちは、イノベーター・ジャパン人事の菊池です。

前回「CEOが語る、デンマークオフィスとデザイン思考の未来 ①」では、代表渡辺がデンマーク訪問時に感じた「共創」の重要性や、デザインとビジネスモデルが融合していく必要性についてインタビューしました。

今回もデンマークでの体験が日本でのビジネス展開にどう影響を与えていったのか、デンマークオフィスと海外事業の展望、そしてデザイン思考やその先など、盛りだくさんの内容です。是非ご覧ください!

目次
  1. デザイン思考プロセスで社会課題に取り組む

  2. 日欧コラボレーションの場としてのデンマークオフィス

  3. デザイン思考とアート思考

デザイン思考プロセスで社会課題に取り組む

――デンマークでは、日本の現状に感じていたモヤモヤ感がはっきりしてきたのでしたね。

渡辺:そう、デザインをはじめとして、世界で成功できるはずのポテンシャルを持ったジャンルがあるのに、日本は何故世界で勝てないのか?それを変革していくにはどのようなものを取り込めば良いのか?デンマークに行ってみて、ヒントになりそうだと思ったのはこの二つ。

共創中心のコミュニティ
デザインがビジネスプロセスにもっと入り込んでいくこと

――デンマークから帰国後、デンマークとのつながりはどうなっていったのでしょうか?

渡辺:KAOSPILOTにはアジア企業でのインターンプログラムがあるんだけど、帰国後うちにその受け入れ依頼があった。以前行ったアントレプレナーシップの講義が印象的だったらしい。それで受け入れたのが2015年。IJの課題を整理してもらい、デザイン思考のフレームワークでソリューションを考えてもらうことになった。

そこで出たのが「女性人材の活躍できる場を一緒に増やしていけないか」というアイデア。当社がいま展開している&donutsの事業計画はすでにあったけれど、デザイナーが企画段階からプロセスに関わるとどうなるか、彼らのエッセンスが入るとどうなるのかを実験してみたかった。

&donutsのnoteはこちらから

普通オフィスのコンセプトを考えてと言われたら、四角い枠を想像するよね。でも、インターンとのワークショップの中で最終的に出来上がったコンセプトは「円形」。&donutsが提供する職住近接のコンセプトをうまく形にしてくれたと思います。これが共創により、社会課題をビジネスで解決する一つの実例となった。

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&donutsのシンボルともなっている、インターン生による構想図。仕事と生活、家族との暮らしが調和している様子を示している。

そんな経緯で、デンマークからのインターン生は2年目、3年目もきて、縁が繋がっていった。

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IJ主催「InnoCAFE」で実施されたデンマークとのワークショップにて。

日欧コラボレーションの場としてのデンマークオフィス

――そこからデンマークオフィスを展開したのはどういう経緯があったのでしょうか?

渡辺:その後、デンマークでKAOSPILOTのパーティに参加する機会があって、学校内にコワーキングスペースがあることを知った。せっかくのつながりを活かしてデンマークで根を張っておきたいと思っていたので、入居できないか相談してみたら快諾してもらえた。

コワーキングスペースにはいろんなスタートアップが入居していたんだけど、当時デンマークにアジア市場への窓口はなかったからこれは両者ともに成長できると思ったからね。

――対日進出の窓口になる狙いがあるんですね。

渡辺:そう、欧州のスタートアップの対日進出窓口になることも期待しているけど、欧州のビジネスアイデアを取り入れて、日本のビジネスとコラボレーションしていく狙いという方が適切。

もともと会社の目指すところは、日本で価値創造をして独自性のある「ビジネスデザイン」をアジアに展開していくという構想だからね。もちろん、将来的にはこのオフィスを使って欧州で何らかの事業展開を目指すこともあり得るとは思うよ。

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――アイデアのコラボレーションという話でしたが、北欧発のデザイン思考とコラボレーションしたイノベーター・ジャパンらしいデザイン思考の構想もあるのでしょうか?

渡辺:海外のエッセンスを入れることで受け入れられやすいという日本の文化はあるけど、アジア発のビジネスデザインカンパニーと掲げているように、本当は日本らしさを出していきたい。

IJの企業理念は「人の可能性を引き出し、豊かな社会を作る」ということだけど、人は自然の中でいきているので、自然への感性とか、日本人自身が見いだせていないコンセプト化できていない強みがあるよね。
北欧のデザイン思考とは異なる文脈かもしれないが、その中に共創とか、禅のように北欧と通じ合うシンプルさの概念もあったはず。今社内ではコミュニケーションチームがあるけど、そういう日本らしい強みを現代的な形でコンセプト化したり、社内外に発信したりして最終的にはビジネスにつなげていきたい。

――将来アジアにも展開していくということですが、「日本らしさ」の魅力はあると思いますか?

渡辺:以前台湾で感じたのは、日本はまだまだイノベーティブな国だと思われているということ。それが持続しているうちに何かプロジェクトを作ってみたいと考えている。イノベーター・ジャパンの福岡オフィスもアジアへの出口としてつくったんだよね。

デザイン思考とアート思考

――感性といえば、最近「デザイン思考」と並んで「アート思考」にも注目していますね。アート思考とはどういうものなんでしょうか。

渡辺:デザイン思考とアート思考の関係を整理すると、デザインは所定の課題に対して解決策を提示するものだけど、アートは直感的に課題を発見するもの。これをうまく使えば、競争のない領域を切り開くことも可能になる。

ゆくゆくはデザイン思考とアート思考はお互いを補い合って、顧客自身も気づかなかった課題を発掘していくものになると思う。その過程では顧客とIJの共創があることは間違いない。

いま社会情報大学院で教えているんだけど、ゲスト講師による「物事は美しい、かっこいいの基準を基にして動いている」という話があって、これに非常に共感している。新しい「かっこいい」の基準を作るのがアート。この「かっこいい」という言葉はビジネスにおける「課題」と読み替えることもできる。

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KAOSPILOTの構内にもアートワークが満ちている

社会の変化も激しくなってきているから、何か課題を与えられるというよりも、課題そのものを定義すべき時代になってきている。いま「伝統」と呼ばれているようなものも、作られた当初は何か世の中に課題を提起するアートワークだったのではないかと思う。

(狭義の意匠を制作するという意味での)デザイン手法を鍛えるより、日本人が持っているアート的感性にフォーカスする方がよいんじゃないかな。アート思考はまだ方法論として確立しているわけじゃないけど、こういう議論を社内外で進めていきたい。

アート思考について渡辺のブログはこちら

例えば禅のような概念がグローバルに展開していったように、日本的な要素も受け入れられる土壌はあるはず。この前行ったインドでは道路が舗装されていないことは課題と思われていないが、こういう課題提起は外の目から見た方が新鮮なこともある。異質な者同士の感性をぶつけることで、日本発のイノベーションを生み出していきたいよね。

――ありがとうございました。アート思考は社内での議論もまだまだ途上で、未来へ向けた構想の色彩が強い分野です。それだけに、イノベーションへ向けた熱量を感じ続けたインタビューでした!

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