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「コミュニケーション85%の伝達率」を制する

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Innovator Japan Editors

デザインの仕事に関わりながら、「デザイン」という言葉を避けてきた。

理由は簡単で表面的、表層的に「形をつくる」という曖昧な言語のような気がしていたからだ。

人の「感覚」である五感、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」。社会、ビジネスは人(ヒト)があって、はじめて存在、機能するものだが、その主役である人の「感覚(センス)」に主眼を置かれることは極めて少ない。

あらためて「人の感覚」×「デザイン」の関係、ビジネスにおける「デザイン」のあり方、可能性、「デザイン」の言葉は広義だが、ここでは、ひとまず「視覚から伝達されるデザイン」として定義し考えてみた。

通勤時、ふと電車の中を見渡すと「人の感覚」×「デザイン」で溢れかえっている。

人の足下を見ると靴のデザイン、パンツのシルエット、ジャケットの色、柄、素材、髪型(ヘアーデザイン)、化粧(メイクアップデザイン)、持っているバッグのデザイン。

人はありとあらゆる選択の「デザイン」を身に纏っていて、なんとなく、その人のファッションのコンセプトだけでなく、パーソナリティと明確な「意思伝達」までもが垣間見える。

人となりを表す「デザイン」の集合は意思を伝えるコミュニケーションツールだ。

そこで思い出したのが、人は見た目が9割の「メラビアンの法則」アルバート・メラビアンという、アメリカの心理学者が提唱した理論。

人が誰かと出会った時には、 視覚情報(Visual)・・・顔立ち、服装、髪型など 聴覚情報(Vocal)・・・話し方、声など 言語情報(Verbal)・・・話している内容など、という3つの要素から判断し、その比率が、 視覚情報(Visual)=55% 聴覚情報(Vocal)=38% 言語情報(Verbal)=7%

この中で見た目にあたるのは、「視覚情報(Visual)=55%」と「聴覚情報(Vocal)=38%」、 55%+38%=93% で、人は見た目が9割。

つまり、メラビアンはコミュニケーションの9割は「視覚情報」にあると提唱している。「視覚情報」の五感における心理学者のパーセンテージは諸説あるけども、大体8割を超えていて、自分のリアルな日常体験を加味し、メラビアンとの間を取ると85%近くはあるのではないか。

ビジネスにおける「デザイン」のあり方。ここは「ブランディング」という要素が非常に大きい。

一番わかりやすいのがクルマのメーカーではないか、と思う。

クルマは「視覚」から飛び込んでくる「デザイン」が真っ先に反映され、機能・性能もあるが、「デザイン」ありきでそれが悪かったら見向きもされない。「デザイン」=「売上」に直結している。

1998年のアウディ(Audi)社、当時、「クワトロ」(Quattro)という名称の四輪駆動システムを持ち、機能・性能面で先進的な技術で知られていたが、肝心のクルマの「デザイン」、車体デザインがおとなしく、コンサバティブでパッとしない。

そこに登場したのが、ドイツ系アメリカ人フリーマン・トーマスがデザインした初代アウディTTだ。「円」を反復表現し、静的にも動的にも映るその力強いフォルムは時の流れに左右されない普遍性を纏っている。過去の自動車デザインの文脈から逸脱した個性あふれる造形、合理主義、機能主義的なモダンデザインの源流を生み出したともいわれる、ドイツの美術・建築学校「バウハウス」の思想を感じさせることから「走るバウハウス」とも言われ賞賛を浴びた。しかし、同時に当初は「マッチョ:強靱さ、逞しさ、勇敢さ、好戦性」の要素をもった異質なデザインとして扱われている。

その後、アウディは初代TTのもつ「力強い造形(マッチョ)」を踏襲し、フロントグリルに「2分割グリル」、2000年代には「シングルフレーム」という特徴的で大胆なデザインを採用、アウディ社のアイデンティティを確立、大きな変貌を遂げ飛躍し、メルセデスベンツ、BMWに引けを取らない「ブランド」として認知される。

アウディ社になぞらえたが「デザイン」を制すると圧倒的なスピードで「ブランド」を構築することが可能になる。

「デザイン」の集合は「ブランド」をもつくる。また力強い「ブランド」のビジネスにおける「マーケティング」の効果は計り知れないものがある。

「視覚」「デザイン」「ブランド」「マーケティング」「ビジネス」の関係性も直結させると結合するコミュニケーションのポイント(点)と可能性が見えてきた。

人、コミュニケーション、その間に発生する「意思伝達」。

視覚から伝達される意思伝達装置=「デザイン」と捉えるとコミュニケーション85%の効果である「視覚」、それを描き表した「デザイン(意匠)」にはすさまじいパワーがある。

「コミュニケーション85%の伝達率」を制したい。そして最適な「意思伝達」を「デザイン」でおこなう。

そう考えると「デザイン(意匠)」という言葉も胸を張って言えるような気がしてきた。

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