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美意識のインプット

こちらは「イノベーター・ジャパン Advent Calendar 202016日目の記事です。

 

こんにちは。SHIGEさんです。

今回は日々のインプットについて思っていることを。

 

 

コロナ禍によるリモートワークなどが続く中でも、日々デザイナーは大小無数の決裁やアウトプットに追われていると思いますが、そのためにはもちろん日々のインプットが重要であることは言うまでもありません。表現の質を高めるために、鮮度の高い上質なものを見たり触れたりしていること、また一朝一夕でなく日々の蓄積を自らの中で熟成させていることも大事です。

それは、生まれてから現在まで自分の目に触れてきたものの点の蓄積が、意識的・無意識的にかかわらず表現するものの基準値を左右しているからです。いままで知らなかったけどこんな世界観や表現がある、と知っている事は、それに類するレベルのものを表現するためには前提条件です。想像できないものは創造できません、ゼロイチはありません。

たしかにコロナ禍では、いわゆる見るという消費さえなかなか難しくなっています。街に出て時節の装いに気づいたり、店に並ぶものを眺めたり、美術館で新たな表現に触れたり、街ゆく人のトレンドを感じとることも難しいのが現状でしょう。

とはいえそれでも、どんなに些細な点でも、より上質なものを目に触れる機会があるかないかは、デザイナーにとってとても重要なことだと思います。

 

look

新たな点に触れるということは、例えるなら自分のこれまでの蓄積の中に新たな点が標され、より細密な微差をも射せる詳細な地図になったり、またこれまでの範囲外に新たな点が標され、より広域な尺度の地図にもなるかもしれません。

そして点から線、面や立体にと次元や視点が俯瞰されることでやがて自分の中の大衆知となり、ともすれば、これまで主観的・個人的趣向では魅力と感じなかったものでも、違う視点の誰かにとっては価値とされ美しく表現されていることに気づいたり、自らもその魅力にはっと気づいたりもする。その集積地図の精度がいわゆる感性・センスだと私は思います。

どこかの誰かにとって価値を秘めていれば、それはこの世に創造物としてあるべきでしょう。でも誰かの気持ちに寄り添って喜びを感じられたり、些細な細部や色彩に気づいて感動できること、それなくして魅力を表現することはできません。

だからこそ、新たなものの魅力を察知する感度、繊細に共感できる豊かな感受性は、表現者であるデザイナーにとって必要なのです。もちろんインプットがあればアウトプットできると簡単な話ではないですが。

 

 

自分だけの趣向は当然誰もが人それぞれもっています。ですが商業デザインにおいて生活者としての価値観に寄り添うということが大切です。巷で人気の映画や雑誌、一部の間で噂のブランドや店、永く愛されている日用品、旅人が訪れたいと願う場所の景色・・・。

現代では、ものが無限に溢れて情報が混沌としている中から良質な表現を取捨選択していくというのは、決して低いハードルではないかもしれません。

ですが、全ては無理としても自分なりの好奇心と直感で、多くが想像するより少しでも一歩上の表現に気をとめ、そのビジュアルの何が魅力なのか、何に人々は共感し感動したのかなど、本質的な理由や背景を捉えておくことが、世の中の潜在的な希求や潮流を読み取って感動的な表現をするための助けになると思います。

(そういえば若いころ上司に、とにかく映画を見ろ、物語の中に人々が共感し心揺れるワンシーンとして広告表現のヒントが隠れているから、と言われたことを思い出しました。)

 

 

価値ではないとみなされているもの…と言うより、未だ価値と気づかれていないものや価値と感じないものでも、どこかの世界ではすでにそれが、その魅力に気づいてもらえるよう一歩上の上質な表現としてビジュアライズされ存在しているかもしれません。

人はその圧倒的に美しい姿形を見た時に初めて、あぁなるほどそういうことか、それは凄く欲しいかもしれない、とその存在意義にようやく気づき感動するのだと思います。

この世に価値のないものはないと私は信じています。どんなものでもらしさというものがあり、見方を変えればどこかの誰かにとってのシズルが隠れてるはずです。

その潜在に気づくアンテナをもって、その感動的な魅力が伝わる表現をするために、日々美意識の高い表現のインプットを浴びていることがデザイナーだけでなく、すべての表現者においてきっと大切なのではないでしょうか。

 

 

おしまい。
それではまた次回!

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