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経営者に必要なリーダーシップとは?

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Christer Windeløv-Lidzélius(ビジネスデザインスクールKaospilot校長@デンマーク)

日本のみなさんこんにちは。Christerです。

今回は経営者に今後求められるリーダーシップとはどんなものなのかを共有します。

まず「Cowboy Number One(一等カウボーイ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?1937年の西洋映画「PublicCowboy No 1」やフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの曲「Two Tribes」、そして元米大統領のロナルド・レーガンへの比喩として使われました。

経営者になるとは、どういうことなのでしょうか?アメリカでは、経営者とは知識・能力において一番優れており、最高の結果を生み出す社員マネジメントを求められていました。重要な決定を一人で下すことが多かったために「Cowboy number one」というあだ名がつけられたロナルド・レーガンに似たところがありますね。しかし、このアメリカ式の大雑把な経営者の定義に納得しない人もいると思いますので、「経営者になるとは、どういうことなのか」という疑問をこれから深く探っていきましょう。

経営者が対峙する問題

経営者として抱える問題には、どのようなものがあり、どう解決すれば良いのでしょうか?原因がはっきりしていて、誰の不満も生まないような解決策を生み出すことは簡単にできるのでしょうか?

おそらく違うでしょう。分析をするだけで解決できるような問題に経営者が対峙することはあまりありません。ほどんどの場合は、いくつかの解決策の間でジレンマが起きていたり、原因と影響の因果関係が不透明であったり、組織内で意見が対立しています。そのため、経営者はただ分析を行なっているだけでは不十分です。分析をした上で、複数の解決策や評価基準を試行し、最高の案を自ら見つけ出す必要があります。単純な問題の解決より少し困難ではありますが、一番重要なことは全員が最適であると納得できる解を探し出すことです。

ですが、時には非常に複雑な問題を抱える場合もあります。全く予想だにしないタイミングで現れ、その重大さや内容も不明で、原因もわかりにくく、因果関係を分析するのがほぼ不可能なものです。私たちKAOSPILOTではこれを、「邪悪な課題(Wicked problems)」と呼んでいます。

経営者は「邪悪な問題」とどのように付き合うべきか

2020年3月11日、デンマーク中のイベント、飲食店、式典は政府の定めたCOVID-19感染対策規定により中止され、娯楽業界は完全にシャットダウンされてしまいました。それに続いて、世界各国でもロックダウンが開始されます。株式会社Danish Event Rentalは、ロックダウンによってさまざまな依頼や案件が中断となり、95%もの利益をその1日で失いました。
Danish Renrtal Eventをはじめとする様々なデンマーク企業の経営者は何が問題だったのか、そしてどう解決するかを考えなければなりませんでした。
例えば、コロナウイルスによる制限はどのくらい続くのか。何ヶ月もの戦いに及ぶということがすぐ判明しましたが、経営者たちは、このパンデミックが今年2021年中に終わることは諦めて、2022年まで続くのかどうかを気にし始めました。いつ完全な治療薬が出るのか?どこまで続くかわからないこの状況を、どうやって生き延びるのか?わからないことは数え切れないほどあります。

コロナ禍でこういった問題を解決していかなければならない経営者たちの責任は甚大なものでしょう。私たちKAOSPILOTは、何年にもわたる経営理論の研究によって、経営者たちが日々対峙する課題について、多くのことが明らかになっています。

もしかしたら「Cowboy number one」になった経営者たちは忘れているかもしれませんが、1967年に「邪悪な問題(Wicked problems)」のコンセプトを提言したC. ウエスト・チャーチマンは、現在起こっている問題の原因・影響を明確にすることも解決方法を見出すプロセスの一部だとしました。さらに、クリエイティビティな人間の想像力が邪悪な問題と向き合う上で大事なことは、問題を分析するだけでなく組織全体が統合して解決に向かわなければならないこと、そして解決策を見つけるには、失敗を覚悟して、トライアンドエラーを繰り返さなければならないと主張しました。なぜなら、邪悪な問題に唯一の最適解などないからです。ジョージ・W・ブッシュ元米国大統領が「私は決定者だ。(I am the decider)」と言ったことは有名ですが、今後求められるリーダーは決定者ではなく、組織全体で解決策を引き出せるような人物なのです。

マネジメントと複雑性理論との関係性

私たちの研究は、経営論と複雑性理論との関係性を発見しました。複雑性理論と言われると、システム論やシステムシンキングを思い浮かべるかもしれません。複雑性理論とは、自然や世界本来の複雑性を認識する研究分野のことです。

経営理論の複雑性が明らかになった今、経営者たちはどのように問題解決に取り組めば良いのでしょうか?「Cowboy number one」としてか、はたまた違ったアプローチをとるのか。その答えは明らかなはずです。

今回は経営者が持つべきリーダーシップについて解説しました。

次回は、イノベーション創生に必要な経営戦略をお教えします。

Thank you.

Christer

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