こんにちは、HRのaokiです。
このシリーズ「ビジネスデザイナーのキャリア論」では、 「ビジネスデザイナー」というキャリアを軸に、仕事の土台となる考え方や、専門性をどう積み上げ、視野を広げていくのかについてお伝えしてきました。
私たちイノベーター・ジャパンでは、ビジネスデザイナーを
営業・マーケティング・デジタル・UXなど複数の専門性を横断し、課題を構造化して、社会・顧客・組織の価値を再設計する人材
と定義しています。
この定義を軸に、#001 #002 #003では、それぞれの視点から、ビジネスデザイナーというキャリアの捉え方を掘り下げてきました。
今回はその続きとして、
専門性を“価値”に変える力──
つまり「統合スキル」について、掘り下げてみたいと思います。
少し抽象的な言葉ですが、実はこの力こそ、顧客や自社の事業に本気で向き合い、考え続けてきた人ほど「何かが足りない気がする」そんな引っかかりの正体でもあります。
その違和感を手がかりに、紐解いていくのが今回のテーマです。
▍専門スキルだけでは、本質的な「手応え」に届かない時代
──課題に応えているのに、なぜ前に進まないのか
私たちは日々、さまざまな企業の方と事業の話をしています。
業界もフェーズも違う。抱えている背景も、それぞれ違う。
それでも、対話を重ねる中でどこか共通した言葉に出会う瞬間があります。
たとえば、こんな相談です。
「集客を強化したい」
「Webをリニューアルしたい」
「営業が属人化していて…」
どれも、現場で向き合っているからこそ出てくる言葉です。
そして、こうした声に対してこれまで真剣に考え、提案をしてきた方も多いと思います。
それでも──
どこか手応えが残らない。
施策は進んだはずなのに、事業全体が前に進んだ感覚が持てない。
もし、そんな経験があるとしたら。
それはスキルが足りなかったからではないのかもしれません。
私たちがこれまで多くの事業に関わる中で感じてきたのは、「できない」のではなく、「つながっていない」ことで生まれる違和感でした。
個々の施策やスキルは、確かに正しい。
でも、それらがどんな目的に向かっているのか、どこにたどり着こうとしているのかが、十分に共有されないまま進んでしまっている。
そんな場面を、何度も見てきました。
そこで必要になるのが、私たちが重視する「統合スキル」です。
▍統合スキルとは「構造で考え、価値の物語を描く力」
私たちが考える統合スキルとは、複数の専門スキルを“たくさん持つこと”ではありません。
営業、マーケティング、ディレクション、デザイン、デジタル…。
どれも今の時代に欠かせない専門性で、多くの方がすでに、そのいくつかをしっかり身につけています。
ただし、それぞれが単体で存在しているだけでは、大きな価値にはなりません。
大切なのは、それらをどんな目的のもとで、どう組み合わせ、どう設計するかです。
さまざまな現場に向き合う中で、私たちが何度も感じてきたのは、「うまくいかない理由」は、スキルそのものよりも、捉え方や視点の置き方にあるということでした。
統合スキルとは、情報を点で終わらせず、背景や目的を整理し、全体の構造として捉えていくこと。そして、そこから「どんな価値を生み出したいのか」という物語を描く力です。
こうした視点で物事を見るようになると、自然と「課題」の捉え方も変わってきます。
課題とは「現状(As Is)」と「ありたい姿(To Be)」のあいだに生まれるギャップであり、このギャップを考えるとき、私たちがとても大切にしているのが、「ありたい姿から逆算して考える」という視点です。
目の前の施策や技術論から入るのではなく、まず「この事業は、どんな状態を目指しているのか」を考える。そこから逆算して、 今、何を選び、どこに手を打つべきなのかを設計していく。
いわゆるバックキャスティングの考え方です。
この視点があると、施策は単なる手段ではなくなり、事業のストーリーの一部として意味を持ち始めます。
「この施策をやりましょう」ではなく、「この事業は、どこを目指していますか?」という問いが生まれる。
これが、私たちの考えるビジネスデザイナーの思考です。
▍「分解して考える」ことが、統合スキルの入口になる
では、この統合スキルはどうすれば身につけられるのでしょうか。
特別な才能や、限られた人だけが持つ力だとは、私たちは思っていません。むしろ、日々の仕事の中で、すでに何度も使っている感覚に近いものだと思っています。
たとえば、
- なぜ、この事業はうまくいっているのか
- 何が価値の源泉になっているのか
- どこを入れ替えたら、別の形になるのか
そんなふうに、物事を一度立ち止まって、ほどいてみる。この姿勢は、少し堅い言葉で言えば「デコンストラクション(解体)」に近い考え方です。
成功事例や、うまくいっている取り組みを、そのまま真似するのではなく、「何が本質だったのか」を見極める。そうして整理された要素は、経験を再現性ある設計へと変えてくれます。
これまでの仕事の中で、
- 相手の背景や置かれている状況を想像してきたこと
- 部分だけでなく、全体の流れを意識して判断してきたこと
- 目の前の依頼の奥にある「本当の目的」を考えようとしてきたこと
そうした姿勢そのものが、すでに統合スキルの土台になっています。
職種や役割は違っていても、事業や組織と向き合う中で同じような視点を使ってきた方は、きっと少なくないはずです。だからこそ、これまで積み重ねてきた経験は、ビジネスデザイナーというキャリアとも自然につながっていくのだと思います。
分解して本質を捉え、ありたい姿から逆算して考える。
この思考を続けていくと、自然と「自分だけで完結しない問い」を扱うようになっていきます。考えを共有し、周囲と方向をそろえていく必要が、少しずつ、見えてくるのです。
▍リーダーシップは、「熱を伝えられるかどうか」
分解し、構造を捉え、価値のストーリーを描けるようになると、周囲との関わり方が少しずつ変わってきます。
「どう進めるか」だけでなく、
「なぜ、それをやるのか」「それは、誰のためなのか」
そんな問いを、自分の言葉で語る場面が増えていく。
OMOSAN Radio(#205)でも触れられていましたが、 多くの人がこのあたりで、初めて「人を動かす」という感覚を意識しはじめます。私たちは、それを リーダーシップの入口だと考えています。
私たちが考えるリーダーシップとは、誰かを強く引っ張ることではありません。
- なぜそれをやるのか
- それは誰のためなのか
- 実現した先に、どんな未来があるのか
それを自分の言葉で語り、周囲に“熱を伝播させられるかどうか”。
この力がある人のまわりには、無理に指示をしなくても、自然と人が集まり、動きが生まれます。
肩書きよりも、姿勢やスタンスのほうが、ずっと大きな影響力を持つ場面も多いのです。
▍「まだ足りない」と感じている人へ
ここまで読んで、 「自分はまだそこまで到達していないな」と感じた方もいるかもしれません。
でも、その感覚はとても健全だと思います。
私自身、今の人事という立場で事業や経営者の話に触れる中で、何度も「見えていなかった視点」に気づかされてきました。それは今も続いています。
大切なのは、最初からできているかどうかではなく、
- 見ようとすること
- 視点を変えて考えてみること
- 自分の枠を、少し外してみること
その積み重ね。その一つ一つが少しずつ視座を引き上げてくれます。
▍ビジネスの“ど真ん中”に立つキャリアへ
イノベーター・ジャパンでは、営業やマーケティングなど専門スキルを、ビジネスをデザインする力へと広げていくことを大切にしています。
言われた課題に答える人から、その先にある価値の構造を描ける人へ。
もし今、「このままでいいのかな」と感じているなら、それは次のステージに進むサインかもしれません。
イノベーター・ジャパンでは、その一歩を踏み出してみたい方を募集しています。
ビジネスのど真ん中で、私たちと一緒にビジネスデザイナーへのキャリアを築いてみませんか。
次回もシリーズの続きをお届けします。
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